内容説明
「黒澤明」というと、怒鳴ってばかりの傲慢な強い男というイメージがあるかも知れませんが、悩み苦しみ傷付きながらも、転んでは起き転んでは起き、それでも素直で純真で茶目っ気たっぷりに八十八年の齢を生き抜いた一人の人間に他なりません。映画を少しでも良いものにしようと夢中になり過ぎて、暴言や毒舌も多い人でしたが、駄々コネの子どもが欲しいものを手に入れたいのと同じで、真っ直ぐなだけの無垢な人でもあったのです……。――日本映画の巨匠・天皇とまで呼ばれた父を持ち、さらに活躍の場を同じ映画という世界に置く著者は、天才クロサワの人間的魅力の一番のファンであり、理解者として、黒澤明の言葉を読み解きます。元気になりたい時、自信を取り戻したい時、夢を追う時……「100の至言」は励ましをくれます。本物の男が語る言葉は、読み手のこころを映す鏡となり、元気をくれる特効薬です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
5
著者は明氏の娘さんで、亡き父を偲んでいる。「勉強することなんて、どこにでも転がっている」(22ページ)。この感性は凡人にはないよな。凡人には気づかないことを気づいてそれを表舞台に引き出すのが映画監督なんだから。「本を読んで損することはない」(24ページ)。だから大量に借りて斜め読みしても自由なんだよな。「日本が誇れるものは文化だ」(98ページ)。文化もいろいろだが、映画も大事な文化だ。「学問ばかり詰め込んでいると、少し怖い気がする」(174ページ)。確かに、追い込みすぎて神経衰弱になってしまいかねないな。2013/02/10
踊る猫
4
黒澤明の作品はついこないだ『夢』を観ただけなのだけれど、あの映画が面白かったのでこういった書物にも手を伸ばしてみたのだった。それだけ私と縁遠い人間だったので、「天皇」「巨匠」と褒められ(疎まれ?)のさばっていた人物というイメージがあったのだけれど、そんな権威を笠に着ることほど黒澤が嫌がっていたことは本書を読めば良く分かる。短気でそのくせ心配性、繊細でありなおかつ子どものような感受性/好奇心を備えていた人……そういうイメージを受けたのだ。娘に当たる和子氏の視線はプライヴェートな黒澤の姿を的確に捉えて興味深い2016/11/15
うりぼう
3
黒沢本では、「天気待ち」の勝ち。2009/03/16
犬こ
2
黒澤明監督は、堅物で厳しいイメージかつ大御所だったから、あまり日本の若い映画監督は近寄れなかったみたいだけど、本当は日本の映画の事、語り合いたかったみたい。監督の素直な思い、考えが垣間見られる一冊。2013/05/11
おこま
1
★★★★☆ イメージとは違いとても人間的な、「普通の人」であったのだな、と思った。「ハングリーと言うけど、あまり腹が減っては何も出来ない」「映画は創るというより、生まれるというのが正確かもしれない」「映画のことは、まだよく分からない」「映画の現場は素晴らしい」という言葉が印象に残った。2012/06/04