内容説明
若さにしがみつき、老いはいつも他人事。どうして日本人は年を取るのが下手になったのだろうか――。バブル時の借金にあえぎ、過労で倒れて入院、数万人に 一人の難病患者となった作家が、自らの「貧・病・老」を赤裸々に綴りながら、「老い」に馴れるためのヒントを伝授する。「楽な人生を送れば長生きする」「新しいことは知らなくて当然」「貧乏でも孤独でもいい」など、読めば肩の力が抜ける、老若男女のための年寄り入門。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
88
頭はクリアー、体はぼろぼろ。この本は、「老い」に加えて希少性の難病にかかった橋本治さんが書いた老いをめぐるエッセイだ。多くの人は、年を取ると身体の「老い」というものは自覚するけれど、頭の方ではいつも若いと思っている。そのため、「自分の老い」をなかなか受け入れることができず、「年を取った自分」に合致したイメージや生き方を見つけられず、老いはいつも他人事であるかのように過ごしている。「自分の老い」には疎く、「他人の老い」には目敏く反応する私たちの思考はいったいどこにあるのか、ここに出てくる橋本2016/03/22
コウメ
61
年をとるということは、どういうことなのか、冒頭部分の源之助の一言が面白かった。/訪ねた人物「ずいぶんきれいにしていらっしゃるですね」。源之助「ただでさえ年寄りはきたないものだから、身の周りくらいはきれいにしておかねば」(笑)/昔と今の年寄り(年をとる)という価値観が変わった。昔は年寄りというと、年をとるったことを認め、粗末にするな!!と扱いが悪かった。ある意味年寄りが年寄りということに対して、プライドを持っていた。それを認める「若さ」があった。2019/06/16
りつこ
48
ドキッとするタイトル。日本人が年を取るのが下手になったのは若いことをよしとする世の中になったから、に納得。私自身、いい年になっても子どもを生んで子どもが大きくなっても、いまだお子ちゃま気分が抜けず、これはもしかしておばあさんになってもそうなのでは?とうそぶくような面があって、それって老いを認めようとしてないことなのだな、と思った。そうか!と納得したり、受け入れがたいと感じたりしながら読んだが、面白かった。10年後、いや5年後に読んだらもっと真に迫って感じるかも。2016/03/01
さぜん
44
年をとるということは老いを認めること。アンチエイジングって必要?老いていくことには逆らわずに生きたいと思う。ご自身の病について細かく語っていてちょっと心配になった。でも、橋本さんの思考は止まらない。死をどちらの方向から考えるかと自問しつつその答えは「死という先のことなんか考えずに今のことだけ考えとけ」ってこと。歴史上の人物を遡って調べると長生きしている人達の共通点がストレスフリーって納得。若さにしがみつくことなく楽に生きれば長生きするのかな。2016/07/31
くさてる
31
なんだか久しぶりに橋本治の橋本治らしい本を読んだ気がします。借金や病気の話は以前の本でも少し触れていたので知っていましたが、逃げようがない加齢からくる生活の困難、老いるということまで、ここまで丁寧に語る姿はさすがに初めて。でも、それが橋本治なんじゃないかな。常に自分の体験と自分の知見で語るひとです。そのかれが語った「老いる」ということ。読んでいて背筋が伸びます。おすすめです。2016/01/30