内容説明
科学・哲学・宗教の三面をあわせもつ普遍的な仏教思想、唯識。「すべては心の中の出来事にすぎない」とする、この大乗仏教の根本思想は、八種の識が世界を生み出し、心に生じる感情や思考は表層に現れると説く。不可思議にして深淵な心の構造を深層から観察・分析し、その秘密を解く唯識思想とは何か。この古くて新しい思想を解説する最良の唯識入門。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
十川×三(とがわばつぞう)
40
良書。ヨガ思想の源流。西暦300年頃、この哲学に到達した古代インドの仏教徒は凄い。内へ内へ深く探求。▼龍樹など中観派による「空」思想を補完するようにできたのが唯識思想。玄奘三蔵が翻訳した上、完成させた。▼中村天風『成功の実現』でのヨガのカリアッパ大師との問答、『ミリンダ王の問い』での問答も、この思想だと判明。すっきり!2023/02/28
姉勤
32
深遠難解な教義をカジュアル化し読者に想像させる工夫を感じさせる。知覚という人間のハードウエアの限界に束縛された、ソフトたる心の限界を超える作法。世界とは自分自身の心の投影であり、智慧に至れば在り方次第でどうとでも変わる、と。零であり壱であり空であるが観測者の位置により変わる量子論にも似て。自分自身をマリオネットを操るように主観を客観化し、さらにその境すら同期させることで見えてくる善性と慈悲。貪ってる自分の浅ましさをその最中に知る。浅い理解はオウムの魔に似通う危険がある、唯だの稚識。2025/07/26
Tenouji
30
小室直樹氏の書を読んで、少しはわかった気になっていた、唯識。もう少し、詳細を知りたく読んでみた。なぜ阿頼耶識という考え方が出てきたのかも含めて、わかりやすく丁寧に解説されていて面白かった。今、我々が見ている宇宙って、人間の阿頼耶識の写し絵かもしれないね。2023/12/17
no.ma
24
唯識とは、唯だ識であり、すなわち心だけが存在し、心の他に「自分」も「もの」も存在しないという仏教の思想です。人はみな一人ひとり、阿頼耶識から生じた世界、宇宙の中に閉じ込められ、その外に抜け出ることはできません。直観としてこれは真理ではないかと感じています。本書は唯識の思想にとどまらず、ではどう生きればよいのかというところまで教えてくれます。「心内の影像を心外の実境と執するところに迷いと苦しみが生ずる」薬師寺の橋本凝胤の言葉が心にしみます。2025/05/10
テツ
24
諸存在はとりとめもないもの。森羅万象は自らの中で創り出され自らの中でだけ像を結ぶ主観でしかとらえられないもの。客観的且つ確固とした世界が存在するなど幻想であり、識により生み出された世界は無常故に生滅を繰り返しやがて無となる。唯識。唯、識によって成り立つ。心の外にはコトもモノも存在せず全ては自らの心の中に。昔々読んだ本の中で唯識論的なお話が何もかもが全て自分の内側が生み出したモノなのかもしれないと教えてくれたとき、力が抜けるほど安堵したな。全てが朝露の如く消え去るのなら生きることに何の不安もなくなる。2021/05/10
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