内容説明
無個性な生き方はできない。しかし何かに成ることも嫌だ。どうせなら、遊び人らしく野垂れ死をしたい――。「暴飲暴食」「心臓破り」「傷は浅いが」……。五十代に入ったことをきっかけに書き始めた連作は、還暦を迎えて急逝する、そのわずか三カ月前に脱稿した表題作をもって、中断した。予感するように死を意識した日々の心情を綴った本書は、まさしく著者の「白鳥の歌」であった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
85
肩に力が入らず、ゆるい生活をしていた人だったんだなあ。戦争の体験、終戦後の苦労、その後の賭博師としての生活、子供がいない暮らし、ぶらぶらと知り合いと酒を呑んだり旅に出たり。そんな人でありながら観察眼と描写力は鋭くで、でもこれも力を抜いた文章。こういう生き方もあるのかと、感じた。解説は伊集院静氏、交流もあり親しかったそうだ。60歳の還暦記念のこの本。脱稿した二週間も経たずに逝去されたという。いかにも色川武大さんらしいな。2025/05/06
阿部義彦
21
古書市にて入手。私と著者との出会いは多分、中学時代に麻雀を覚えた時に本屋で見かけた双葉書房の新書判の麻雀小説群でした、有名な「麻雀放浪記」ほか、「東一局五十二本場」「牌の魔術師」等。麻雀研究誌も買ってたので当時の麻雀新撰組の記事で写真を見て、眠そうな顔で写ってたのを覚えています。その後思春期を過ぎて、笑芸人の生き字引として有名な事や、直木賞を受賞した事をしり、「怪しい来客簿」を読んで才能に痺れました。そんな色川さんの五十歳からの連作。ナルコレプシーを患ってからの無頼者の人生模様、奥様が魅力的で笑が溢れる。2024/06/26
はと
15
再読。短編7篇。色川氏は、最終篇「引越貧乏」の脱稿3か月後に亡くなった。独特のバランス感覚と優しさ、独自の道しか歩んでいけない者の深い孤独と屈託。かつての色川氏の作品の中では、彼の孤独や屈託が、マグマのようにふつふつと高い温度で湧き上がり、見えない光を放つようだった。力強い生命力やエネルギーに溢れ、それでいて常に失われないさらりとした冷めた視線。他の誰にも書けない色川武大だけの文章。でも、この本の作品群には、もうそんな渦を巻くようなエネルギーは感じられない。穏やかで寂しくて、読んでいてひどく切なかった。2013/10/05
桜もち 太郎
8
最晩年に書かれた連作短篇集。大変な人生を歩んできた色川さん。本物の不良少年だった時代、若くして勝負師として賭けごとに狂う青春時代。考えられないような体験から生まれた数々の私小説は、自分の狭い人生観を広げてくれる。「自然の理の後を追う生き方しかできない」と色川さん。ありのままの優しさが詰まった作品だった。2015/06/06
鮎川まどか@AnxAn
5
◆初色川。 現代娯楽小説のようであり、滑稽本のようであったり。 学とは無縁のはずなのに、漱石の香りを感じたのは私だけか?2011/02/06
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