内容説明
第二次世界大戦下、ユダヤ難民に日本のヴィザを発給し、六千人の命を救った外交官・杉原千畝。彼はなぜ、政府の命令に背いて「命のヴィザ」を出し続けることができたのか――。そこには、世界情勢を読み解き、綱渡りの駆け引きに挑む〈情報のプロフェッショナル〉の素顔が隠されていた。〈外務省のトレジャー・ハンター〉が放つ、渾身のノンフィクション! 『諜報の天才 杉原千畝』改題。※新潮文庫に掲載の写真の一部は、電子版には収録しておりません。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
68
ヨーロッパ外交史として、とても勉強になった。それだけでなく、インテリジェンス・オフィサーとしての杉原氏の評伝を読めたのもよかった。ヒューマニズムだけでは、あれだけ多くのユダヤ人の命を救えない。遠く広くものを見渡す目と才があったからこそできたことである。2015/12/09
ゆかーん
60
幼い頃から博学だった千畝さん。彼は、親の敷いたレールを歩まず、高等文官の道に進みます。その能力の高さを買われた彼は、満州への外交官となりました。そして、そこで出会ったクラウディアさんと結婚しますが、スパイ容疑をかけられ、離婚し母国へ帰還。しかし、それから半年も経たずに、幸子さんと再婚したことには驚かされました!そして今度はリトアニアへ…。ヴィザを発行する話以上に、彼の波乱万丈な人生に度肝を抜かしました!ソ連の脅威から多くの人々を救った彼の行為は、ヒューマニストだからこそ、成し遂げられたと思います!2016/04/07
壱萬参仟縁
51
2011年初出を改題。新しい杉原像とは、ヒューマニストの像を壊すことなく、他面から彼を描く、インテリジェンス・オフィサーとしての彼を描くこと。インテリジェンス活動とは、貴重な情報を入手、精査し、将来に役立てる活動(14頁)。霞ヶ関に稀な変わり者、大橋忠一総領事が杉原を重用(41頁)。外交官とは、国家を代表して外国との交流の最前線に立ち、母国の国益に貢献する者(235頁)。今はどうかと思う。ナチスの手からユダヤ人を救った外交官杉原千畝(258頁~)。2016/04/06
ころこ
43
ヒューマニズムとして語られがちな杉原のパブリック・イメージを刷新しようとする試み。杉原がユダヤ系住民に対してヴィザを発給できたのも、彼の情報収集能力と情勢判断をもとにしたのだ。まず、独ソ不可侵条約が破られてドイツ軍がリトアニアを占拠するという情報を、ポーランドの軍人筋から取得していたのではないかということをソリ―少年とその父親との親交から解き明かす。ヴィザに手書きでなくスタンプが使われていたことから、ある程度の用意があったのではないかと推測する。そして、日本外務省からの法令順守の命令に違反した場合、発給し2023/10/10
James Hayashi
34
従来から知られる六千人のユダヤ人を助けたヒューマニストの杉原千畝を語るのでなく、インテリジェンス・オフィサー(平和を求める外交官)としての彼を描いている。著者が運命的な偶然により杉原千畝が彼の人生を歩いたと書かれているが、時と場所を選んで彼が生まれ出ずるべき処を選択したとも思われた。今迄縁のなかった東ヨーロッパの近代史に触れ幾つかの読みたい本のリストが上ってきた。これも一つの読書の楽しみ。また、杉浦氏以外にもユダヤ人を助けた外交官(他国人)がいた事は知らなかった。2016/01/16