内容説明
製材小屋のせがれとして生れ、父や兄から絶えず虐待され、暗い日々を送るジュリヤン・ソレル。彼は華奢な体つきとデリケートな美貌の持主だが、不屈の強靱な意志を内に秘め、町を支配するブルジョアに対する激しい憎悪の念に燃えていた。僧侶になって出世しようという野心を抱いていたジュリヤンは、たまたま町長レーナル家の家庭教師になり、純真な夫人を誘惑してしまう……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
364
最初に読んだのは大学1年生の時。この作品を皮切りに次々とスタンダールを読んで、全集まで買い揃えた。当時、自分ではすっかりベーリストのつもりだったのだろう。久しぶりに読んでみて、レナール夫人とのことをどのように解釈してよいのか迷いが生じた。この後の展開も結末も知っているだけに、ジュリアンの野心と愛情との関係がなんとも難解なのだ。ヴェリエールからブザンソンの神学校に移ってからは、単線化されるだけにわかりやすいのだが。下巻ではパリへ。そしてマチルダのいるラ・モール侯爵家へと物語りは展開してゆく。楽しみだ。2014/08/30
遥かなる想い
205
貧しい生まれながら、 美貌を武器に のし上がっていこうとする 青年ジュリヤン・ソレルが小気味良い。 野心に溢れる 心の底に 潜む 貴族階級への 強い憎悪…誘惑されるレーナル夫人の 純真さが 際立つ。 二人の心理描写が 意外に細かいことを 改めて 気づく、そんな上巻だった。2018/05/03
ケイ
160
読むのは五度目くらい。しかし、何度読んでも、ジュリアンがなぜレナール夫人のために身を危険にさらすのかがわからない。彼が恋する男に見えないからだ。今回は、神学校の場面をとても楽しく読んだ。王政復古と、七月革命への道のりが、ストーリーの中に巧みに埋め込まれてる素晴らしさにも舌を巻く。今更ながらに、これまではジュリアン・ソレルの立身出世への欲望と不倫の恋ばかりに気をとられて正しく読み込めていなかったのだと気付いた。これら全ての伏線を回収していく後半を読むのが待てず、続けて本を手に取る。2016/03/17
ehirano1
143
過去に岩波版で上巻を読んだのですが撃沈してはや数年。久々と思いましたが、岩波が手元になかったので新潮で再チャレンジ。本作は時代背景をある程度理解していないと単なる昼ドラになってしまうことを実感しました。高慢な自尊心の達成感を男性視点から、恋心の苦悩を女性視点から描かれていて凄かった。要は、ナポレオン推し/厨のニキが、NTRを介して自尊心と愛執に苦悩するという濃密すぎる前半戦でした。2024/01/14
のっち♬
143
王政復古のために軍人を諦めたジュリアンは家庭教師先で町長夫人との不倫関係に溺れていく。時代背景や貧困下における青年の野心と自尊もさることながら、何より圧巻なのは微に入り細を穿った恋愛心理の描写だろう。青年特有の熱烈な執心ぶりも純真な夫人の揺れ動きも極めて情熱的でありながら実に客観的で分析的に描かれており、これらをこの水準で両立させた点は著者の面目躍如といったところ。「この鐘が打ち終わるまでに、この女の手を握ることが出来なかったら、部屋に帰って自殺する」—全身全霊で恋愛に身を投じて生きた著者ならではの一文。2017/09/26




