岩波新書<br> 村上春樹は,むずかしい

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岩波新書
村上春樹は,むずかしい

  • 著者名:加藤典洋
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 岩波書店(2016/03発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004315759

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内容説明

はたして村上文学は,大衆的な人気に支えられる文学にとどまるものなのか.文学的達成があるとすれば,その真価とはなにか――.「わかりにくい」村上春樹,「むずかしい」村上春樹,誰にも理解されていない村上春樹の文学像について,全作品を詳細に読み解いてきた著者ならではの視座から,その核心を提示する.

目次

目  次
   はじめに 野球帽をかぶった文学?

 第1部 否定性のゆくえ 1979─87年

 Ⅰ 否定性と悲哀──『風の歌を聴け』の画期性
  1 肯定性の肯定──「気分が良くて何が悪い?」
  2 「新しい天使」と風の歌

 Ⅱ 戦う小説家──初期
  3 中国へのまなざし──「中国行きのスロウ・ボート」
  4 貧しい人々と小さな隣人──「貧乏な叔母さんの話」
  5 「内ゲバ」の死者への関心──「ニューヨーク炭鉱の悲劇」

 Ⅲ 個の世界──前期
  6 ポストモダン社会と抵抗──「パン屋襲撃」と「パン屋再襲撃」
  7 否定性から内閉性へ──『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』と「ファミリー・アフェア」

 第2部 磁石のきかない世界で 1987─99年

 Ⅳ 対の世界──中期
  8 恋愛小説の誕生──『ノルウェイの森』
  9 『ねじまき鳥クロニクル』の歴史記述

 Ⅴ 時代とのせめぎあい──転換期
  10 一九九五年の態度変更──「めくらやなぎと、眠る女」
  11 村上春樹、武装解除される──『アンダーグラウンド』

 第3部 闇の奥へ 1999─2010年

 Ⅵ 父と子の基軸──後期
  12 もっと小さく、もっと遠く。──『スプートニクの恋人』と『神の子どもたちはみな踊る』
  13 換喩と異界と「全体的な喩」──『海辺のカフカ』と『アフターダーク』
  14 まだ書き終えられていないこと──『1Q84』
   終りに 「大きな主題」と「小さな主題」──三・一一以後の展開
   あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

133
英米の書店で村上春樹の翻訳本は表紙に「MURAKAMI」と大書され、クライトンやグリシャムと並んで平積みされている。日本では村上作品を認めない空気が強かったし、本書冒頭にあるように東アジア知識層にも読まれていない。洋の東西を問わず大衆は村上を求める理由を、著者は時代の支配的風潮に抗って生きる者のあがきに見る。確固とした理想も目標もなく、連帯できない社会に迎合するしかない無力な自分への憤懣を、村上文学の「個の欠落」に見い出しているのだと。ならば村上の読者はトランプ支持者やネトウヨと共通しているのではないか。2024/02/18

アキ

89
2015年発刊なのでデビュー作から色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年までの評論。こうして小説を連なりで眺めてみると村上春樹がいかに時代と関わりながら変遷してきたかがよくわかる。初期・風の歌を聴けから前期・世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド、中期・ねじまき鳥クロニクル、後期・1Q84そして2009年の父の死と現在を、個(点)・対(横軸)・父と子(縦軸)という観点で論じる内容は、いくつかの疑問や隠喩・換喩を溶かしてゆく心地よさを感じました。現在72歳の村上春樹氏、集大成の長編をお待ちしております2021/02/06

テル35

61
村上作品をほぼ読んでいるタイプの読者に刺さる内容。「新たな肯定性が、没落する否定性への連帯感をなお失わず、また自らの限界の意識をも手放さず、これを悲哀の感情のもとに見送っているのだ」・・・重層的に、時代の進歩を受容する。それが、なぜか「かなしい」のは、人間の進歩というものが、言い当てられる範囲内のものに過ぎないからではないのか。おそらく作家の意識にいちばん接近した加藤先生とお話できないことを悔やむ。2025/05/23

佐島楓

55
とてもよかった。評論文の書き方の勉強になったし、指摘も鋭い。吉行淳之介は春樹さんのことを高くかっていたということを初めて知った。2016/03/20

抹茶モナカ

41
真っ当な村上主義者は「村上春樹解説本」の類は読むべきではない、と、されているが、ついつい読んでしまいました。加藤典洋さんの読み方は、ちょっと深読みと思い込みの傾向が昔からあるような気がしていて、でも、断定口調の文章なので、「村上春樹イエローページ」なんかで嫌な感じがしていたけれど、読んでみました。小説の解釈に正解はないとして、一つの読み方としては有効な解説が並びつつ、う~ん、出来れば、村上作品は浴びるようにして読んで、心が揺れる感じが好きなので、ここまで断定されたりするのは、やはり、嫌いですね。2016/09/29

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