内容説明
会社を早期退職し、シベリア鉄道に乗った男・石井。旅で男は半生を振り返り、孤独と対峙していた。同じルートを先行して旅する若い女性・エリカの自殺への決意を知り、女性を追う……。舞台は東ヨーロッパを越え、パリからリスボンへ。悠久の大地・ユーラシアを列車で走り、生と死の根源を問いかける、著者畢竟の大河ロマン小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
360
下巻はワルシャワからベルリン、フライブルク、コルマール、パリ、バルセロナ、マドリッドそして終着地リスボンまでと、西ヨーロッパ篇。相変わらず半ばは紀行、残りの半ばは追跡行と主人公石井の回想だ。読者には上巻のかなり早い時点でプロットの進行と結末には予想がついていながらもページをめくる指が止まらないのは著者の筆力か。もっとも、結末は私の予想とは微妙に違ってはいたけれど。この著者はもう少し追いかけてみようかと思う。評価はそれから。なお、解説は鉄女の酒井順子が書いているが、どうしたことか全く冴えがない。2019/05/12
dr2006
33
下巻はモスクワから西の果ポルトガルのリスボンへ。石井はベルリンで早くもエリカに追いつく。エリカは実父を3歳の時亡くし、後父との間に歪んだ関係があった。そのことを悔やみ旅の終着で自ら命を絶つと明かす。石井はエリカに会うことで物理的には目的を達しているが、果たして彼女の自死を阻止できるのか。ヨーロッパに入り観光地も華やかに、食事、酒、移動のシーンが行く手を阻み、西を目指す内面的なストーリーの展開が気になって読み急ぐ有様だ。これだけの長編を擁し、大切な結末を読者の想像力に委ねなかったことが良かったと思う。2018/11/18
きのぴ
20
エリカを見つけるのが思いの外早かったけれど、その分石井とエリカの交流を多く読めて良かった。最後は石井がエリカを助けることができるのかハラハラしたけれど、安易な結末でなくて満足。石井とエリカの心情もさることながら、いろいろな町の風景や料理・お酒を味わうこともできて、まさに旅をしていたような読書時間だった。2019/01/15
mayu
16
再読。娘を自殺で亡くした石井がユーラシア大陸を鉄道で踏破する。その過程で自殺願望があり、娘に似た少女エリカと出会う。エリカを救いたいと願い、エリカを追って旅を続ける石井。エリカを救うことが娘の死を無駄にしないことだと信じて。石井はエリカを救えるのか。エリカの心情を表すマトリョーシカが旅の途中でも旅の終わりでも意味を持つ。大崎さんの小説の仄暗く切ない雰囲気が好み。風景描写も多くあり、旅行記としても読める。2019/06/22
nori
5
Unfortunately, as I foreseen, the worst and cheapest ending was induced, after travel journal with おっさん emotion. I assume assumed manga should be better than this novel. So far, 深夜特急 may be the best travel journal.