内容説明
かつて私が話をしたという「前世の記憶」という言葉に触発されてずーっと考えてきたことをアキちゃんは熱く語り、私は十五歳も年下なのに高校生に戻ってうずうずした村中鳴海といきなり旅に出たときの記憶を鮮やかによみがえらせる。その間にも猫と人間に流れる時間は続いていく……。野間文芸賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きょちょ
27
保坂ファンだけれど辛口。 今までで一番面白くなかった。 最後までこの作品の良さが分からなかった。 山梨で村中鳴海に対し、「掃除」の話をどう持ち出すか、というところが面白かった程度。 村中鳴海も最初はちょっと魅力的に映ったが、結局嫌な女だった。 山下公園での人々の描写などは読んでいて苦痛でしかなかった。 読み手のことを全く無視して(私はそれ自体は決して悪いこととは思っておりません)、作品があっちこっち独り歩きしていて全体に散漫な印象がぬぐえない。 作者の意図も外れて作品が勝手に独り歩きしているのだろう。 ×2018/07/14
メセニ
7
”自分が分からん=クソ”だなんてのは成り立たないし、たいていはむしろ自分のリテラシーが問題だけど、にしてもこの作品には間合いに入らせてもらえなかった。解説で何となく解消されたけど。そもそもこの小説は語り手「私」の不確かな断片的記憶の集積で、作者には最初から設定や筋書などの考えがない。当初は重要と考えてなかった人物が自らの意思で魅力的に動き始めたと言うから、いかに書き手の意図を離れ、作品がそれ自体によって生成されていったかが分かる。意味性や解釈を離れ、純粋にテクストと向き合えない時点でおいてきぼりを食らう。2017/05/09
Nick
6
長かった。描写が丁寧、話があちこちに飛ぶ、あり得ない近所付き合い、予想に反して妻への言及が少ない、篠島の話がもっとあると思った、猫とのかかわり合いにはホッコリした。たまにはこのような小説も良いかな、と思った。2024/09/07
qoop
6
時系列を無視して意識の流れを追い、自己の意識の流れから逸脱して他者の意識を取り込み、意識して〈見る〉行いを飛び出て〈見える〉もの全てを記述し、自己の日常を語りながら地続きで他者の日常を追い始める …と本作は生活の情景を追いながらそのスケール感は止まることを知らず、時間も空間も意識と無意識も自己と他者も、境界を設けずにミニマムなまま世界を飲み込んでいく。これは一体何なんだ。山下公園の情景が続くのを読みながら、すごい本だな…としばらくドキドキが止まらなかった。2020/01/15
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4
「正しく今を生きるミュージシャンだけがブルースのギタリストが鳴らさずに死んでいった音を聴く。今から二十年もすれば高校生だってジミヘンと同じ演奏をするようになるだろうが、その演奏からはブルースは聞こえない。ジミヘンはとっくに死んだブルース奏者のギターの音にまで活力を吹き込んだ。」2016/07/24
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