講談社選書メチエ<br> 小津安二郎の喜び

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講談社選書メチエ
小津安二郎の喜び

  • 著者名:前田英樹【著】
  • 価格 ¥1,980(本体¥1,800)
  • 講談社(2016/02発売)
  • ポイント 18pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784062586207

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内容説明

小津映画の代名詞とも言える「ロー・ポジション」に据えられたキャメラは、悠久の静けさを帯びた〈永遠の現在〉を捉え続けた──『学生ロマンス 若き日』(昭和4年)から遺作『秋刀魚の味』(昭和37年)まで、現存する全37作品を一貫したまなざしの下で読み解いていく喜び。本書を読み終えたなら、その人は小津作品だけが達成しえた驚異の地平を目の前にするだろう。映画を愛するすべての者に贈る渾身の1冊!

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

踊る猫

29
しなやかな小津論だと思った。人は生き、老いて死ぬ。しかし後の世代になにかを託し、その後の世代も老いる。その繰り返し。著者は植物的/動物的という対立項を入れて映画を分析する(東浩紀とは関係ないので、念の為に)。小津の映画は確かにガツガツした動物的な野心を持つ人間はなかなか登場しない。するとしたら相当な俗物としてだろう。むろん野心が皆無な人間など居ないわけだが、植物的に「欲を言えばきりがない」と諦観を生きているのが本当ではないか。そんな小津の世界を愛し、論理的でありながらマッチョな読みや断定をしない姿勢がある2021/03/10

踊る猫

23
手堅い小津安二郎論だ。この著者は身体感覚に目を配り、かつ哲学的とも言える思弁を駆使して(ドゥルーズを引きつつ)小津の世界に肉薄する。小津が「植物的」な資質を備えていたこと、つまりガツガツした物理的/俗物的欲求に走らず退屈と言える日々の繰り返しに喜びを見出していたことが指摘され、それはすなわち小津を愛する人々の価値観/人生観ともリンクして余韻を残すのではないか。私たちもまた「植物的」に生きることができ、小津のように生きることができるというように……悪く言えばそうした真っ当さが癖のなさと表裏一体を為すところか2022/03/25

amanon

6
小津の映画を見る喜び…何度目にしても、その何気ない場面が思いもよらなかった美をもたらすということへの驚き。そして、それを語らずにはおれなくなるという恐らく他の映画には成し得ない喚起力を改めて認識。そして文章を通して、自分が見た映画を追体験することにも何とも言えない味わいがあることも。ところで、本書で繰り返される小津の映画に通底する農耕民族的な傾向というのは、若干眉唾ではあるけれど、熟考に価する見解だと思う。また、同じ仏系である蓮實の小津論への言及が全くないというのが、逆に蓮實への意識を暗示している気が…2019/01/25

田中峰和

2
昭和二年、23歳のとき「懺悔の刃」で映画監督の道に入った小津は生涯で50数本の作品を残した。この時代劇に違和感をもった小津は松竹の要請した7本の企画を断り、翌年には6本のドタバタ喜劇を監督。笑いの天分に根差した初期作品はアメリカ映画の影響を受けていた。ロー・ポジション撮影を特徴とする小津の作品は、日本人固有の畳の暮らしを意識したものとされるがそれだけではない。他人より高い位置から俯瞰する位置に立つことは、人より優位に立とうとする狩猟民の視点。稲作民の視点であり、畳の上で暮らす視点ではない。深い読みである。2016/04/09

Isamash

0
全作品を論じ、作者である前田英樹・立教大学教授の小津監督映画への情熱的愛は感じた。 ただ、映像の二面性を強く主張していいるが、具体的な細部までは述べられておらず、十分に理解納得できなかった。 ローアングルに関しては、上から目線でない視点という観点で語られているが、分かった様で分からなく、スッキリとはしなかった。 せっかく個別映画について述べているので、挿入カット映像とうの謎解きの様な部分も欲しかった。2020/11/08

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