内容説明
大ヒットを連発し、大スター今西良の名を世に知らしめた作曲家・風間俊介。しかし愛する良は、風間を拒絶し去っていった。喪失の痛みに苦しむ風間は、野生の獣のような凶暴さを秘めた青年・忍と出会う。忍の中に奇跡的な音楽の才能を見出した風間は、その才に惹かれてゆく。しかし忍は、恐ろしくも美しい刺青を背負う、美貌のヤクザ・黒須に「買われた」存在で……。作家・栗本薫が、絶望の底の生を壮絶なまでに描ききった大作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くたくた
43
風間が主人公のスピンオフ、とはいえ「東京サーガ」の立派な一員。ストーリーはなかなか面白く、薫サンの脳内からだだ漏れる栗本とも風間とも判別しないグダグダ無限ループの冗長過ぎる語りさえなければ、傑作、少なくとも佳作にはなったんじゃないか。だが字は細かいし、この厚さの上下巻になるようは本ではない。良は拘置所、自分は地位も名誉も無くしてドブの底に沈んだような風間が思いもかけず出会った人間達。独りは天性の絶対音感と共感覚を持った少年。そしてもう一人は漆黒の美形のヤクザ。その名も黒須さんの百花繚乱の刺青を見てみたい。2022/07/02
ルカ
3
始めはどうにも入り込めず読み進まなかったけれど、忍に会ったあたりからグイグイと一気に読めた。2014/05/28
RIN
2
「東京サーガ」シリーズ。この作家さんは伊集院大介シリーズと六道が辻シリーズしか読んだことがないが、まぁ、この系統の気はあったものの、ここまでソレ一色な小説は、聊か鬱陶しい。そういうのナシでも、これぞ昭和の歌謡界!的な舞台設定は興味深いし、ヤサグレた作曲家・風間と迷い犬のような忍、いかにもそそるヤクザの3人が、それぞれに浮かび上がろうとして彷徨う魂の行方を見たいと思う。2011/10/01
tegege
2
饒舌で濃厚な文章が読ませる。ぐいぐいと引き込まれ、前半最後の濡れ場は、ぐっときた。俺は男だしノンケなのに。音楽関連の描写は素晴らしい。音楽は裏切らない、嘘を許さないってくだりが特に良い。2011/08/23
冬薔薇
1
なぜかと思うほどに繰り返しの描写が続く。愛するものを傷つけ自らも傷ついて内に閉じこもり、その暗い穴から抜け出す物語。2012/05/26