内容説明
【第117回直木賞受賞作】中堅保険会社に勤める5人のOL。条件のよい結婚に策略を巡らす美人のリサ。家事能力ゼロで結婚に失敗する紀子。有能なOLでありながら会社を辞めざるをえなくなったみどり。自分の城を持つことに邁進するいきおくれの康子。そして得意の英語で自立をめざす紗織。男性優位社会の中で、踏まれても虐げられても逞しく人生を切り開いていこうとする女たち。それぞれの選択と闘いを描く痛快長編。
目次
ナイーヴ
アダムの背中1
シャトレーヌ城主
アダムの背中2
コースアウト
扉を開けて
ファーストクラスの客
上昇気流
それぞれの春
二百五十個のトマトの夜
離陸
タッチ アンド ゴー
三十四歳のせみしぐれ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
503
5人(純子を入れれば6人)の女性たちそれぞれの人生の選択を実に鮮やかに描く。「ジハード」は大袈裟なようでもあるが、その覚悟で臨んだ女たちだからこそ、読んでいて痛快なのだ。誰にとっても一回しかない人生、彼女たちは、それぞれに思いがけない転機に賭ける。さて、読者は誰に最も共感するだろう。少なくても紀子はないと思っていたが、直木賞の選考委員の男性作家たちには、一番人気であったらしい。私なら紗織か、あるいはリサか、迷うところ。さらには純子の魅力も捨て難い。そうして読者に目移りさせるところも、本書の仕掛けなのだ。2020/03/15
いつでも母さん
211
あの頃、どんな感想を持ったのか自分。20年ぶりの再読・・篠田作家の勢いを感じる作品だったなぁと、今更ながら楽しく読んだ。同じ会社の5人の女性に自分が働いていた頃を微かに思い出してダブらせてみてもここまでのタイプはいなかったなぁ。紀子のような女性が苦手なのは今も変わらないが、登場した男性たちも私にはどうもピンとこない。とは言え平成が終わり今、女たちはどうだろう?2020/03/16
hit4papa
132
中堅の保険会社に勤務する五人のOLにスポットを当てた作品です。仕事や恋愛に悩み多き彼女たちの目指すところは様々。無為に過ごした日々に気づくもの、海外にチャンスを見出そうとするもの、結婚から道を拓こうとするもの、家庭とキャリアの両立を望むもの。二十年以上前の作品ですが、古さは感じさせません(タイトルは除く)。ただし、社会において女性が声を上げやすい環境になりつつあるので、暫くすると今や昔となるかも。男性にも共感できる点が多々あり、楽しめます。ラストのふれ幅が大きくて思いのほかワクワクです。【直木賞】2021/06/14
mariya926
125
第117回直木賞受賞作品。5人の損保会社に勤めている女性の物語。それぞれ年齢や性格は違うのに、自分の人生を切り開いていく逞しさが爽快でした。会社の雰囲気が30歳以上をリストラにしていく中で、結婚や留学や起業など···特にアメリカの留学の部分は興味深い内容でした。最近は同年代の女性の小説を読みたかったので、ピッタリでした。今年は忙しかったので久々に読書に没頭できましたが、やっぱり読書はいいなぁと思いました~。2023/11/23
エドワード
114
20年程前の世相を背景にしているが、抜群に面白い。インターネットが無いくらいで、今でも十分通じるね。カイシャでの、女はつらいよ物語。「なぜOLと呼ぶのよ。社員じゃないの?」というセリフにピンと来た。先日管理職研修を受けた友人が、「セクハラのマニュアルがあるんだよ」と話していた。「女の子」「ちゃん付け」呼びは当世NGだそうな。なる程ねェ。ここでは<普通のOL>五人それぞれの<神聖なる闘い>を描いている。上昇志向のリサと紗織のエピソードが秀逸だ。2014年、二人は元気にしてるのだろうか?紀子はどうしてるかな?2014/01/07




