内容説明
音楽療法士がアメリカのホスピスで出会った10人の物語。 「千の風になって」「Love Me Tender」など名曲とともに紡がれる感涙のノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
naoっぴ
77
アメリカのホスピスで音楽療法士として働いた著者の10年間の記録。ある時はギターで、ある時はハープで、死が間近な患者さんの心に寄り添って歌を届ける。著者の経験を通して、死にゆく人たちの心情に少し触れることができたし、なにより私自身、演奏活動をするはしくれとして音楽のもつ可能性にいろいろと感じるものがありました。聴力は最期まで残るとはよく言われているけれど、なんとなく、それは言葉よりも旋律なのではないのかと思うのです。音楽には情動を呼び覚ます力があるのだと、この本を読んで改めて感じます。2016/09/29
miww
71
アメリカのホスピスで音楽療法士として多くの患者さんと関わって来きた著者。音楽が終末医療に取り入れられていたとは知りませんでした。それぞれに歩んできた人生に寄り添う音楽はみんなあるはず。死期が近づいても最後まで残るのが「聴覚」だという。全く話せなかった人が話せたり、最期に目を開けて微笑んだりと信じられない事が実際に起こるんですね。久しぶりに聴いた大好きなナタリー・コール父娘の「アンフォゲッタブル」に心が震えた。人生最期に何が聴きたいか深く自分に問いかける。大好きな音楽に送られて旅立ちたいな。2016/10/10
ぶんこ
51
アメリカで音楽療法士として活躍された日々を綴った実話です。目も見えず、話すことも出来ず、手を握ることが出来なくなっても、聞くことはできる。確かに麻酔からさめかけの時は、目を開けられないけれど話す声は聞こえてました。最期を迎える患者さんが安らかに、そしてそれを看取る親しい人々にも安らぎを与えてくれる音楽療法士さん。日本にもあるのでしょうか?この本を読むと、個人主義と言われる欧米で、意外と家族の絆が強いことに感動しました。ただ音楽の技術、知識を使うだけではなく、患者さんに信頼される人間力というのに共感。2018/03/26
マリリン
49
本書では多くの患者さんを看取ってきた音楽療法士の著者がその効果の素晴らしさを綴っている。音楽の心理的効果・聴覚が最後まで残る事・音楽療法士という仕事は音楽を生業にしていた頃知った。この仕事を薦められた事もあったが、丁重にお断りしたのは私が目指した音楽と方向性の違い。 自身の演奏も含め多くの音楽を聴いてきた。死が近くなるとどのうような現象が起こるか書いてある小冊子も読んだ。心は内へと向かうという。私の人生の終焉にはどんな音楽が脳裏をよぎるのだろうか。静かにひとりでその時を迎えられたらと思わずにはいられない。2021/04/25
ちゃちゃ
47
音楽療法士、そんな職業があることも知らず偶然手にした本だった。筆者はアメリカのホスピスで働く若き音楽療法士。彼女は患者さんの人生の終焉に寄り添い静かに話に耳を傾け、自らも心を開いて信頼を築いた上で歌う。それは、「What a Wonderful World」だったり「Love me Tender」だったり「椰子の実」だったりする。人が死を迎えるとき、聴覚は最後まで残る感覚だそうだ。自分が生きた物語を、信頼関係を築いたセラピストと辿るとき、音楽の不思議な力が立ち現れ、満足して旅立つことができたら素晴らしい。2016/09/24