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内容説明
ウォール街の法律事務所で雇った寡黙な男は、決まった仕事以外の用を言いつけると「そうしない方がいいと思います」と言って一切を拒絶するのだった。男の不可解な振る舞いを通して社会の闇を抉る「書記バートルビー」。アメリカのアザラシ猟船の船長デラーノは、遭難同然のスペインの奴隷運搬船を発見する。嫌な予感を抱きつつ支援を申し出るが……劇的な展開が待ち受ける傑作「漂流船」。アメリカ最大の文豪の代表的中篇2篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
takaichiro
102
「白鯨」の著者メルヴィルの米国文学作品。これぞ文学という雰囲気で当時の社会問題を風刺、また自分なりの主張を織り交ぜて物語を展開。書記パートルビーは秀作。社会常識の中で生きること自体が”奴隷化”していることにならないかと問いかける。読者はパートルビーの仕事を拒絶する姿に違和感を抱くだろうが、それは読者が勤労を無条件に受け入れる社会の奴隷となっているからだとの主張を底流におく。人間は意識的な存在。心に浮かぶ思い・信念に従って生きざるを得ないのであり、どの立場をとっても何かに縛られている状態に変わりない。ふむ。2019/08/29
ペグ
82
訳者を変えて再々読。たった一言しか発しない〜その一言は否定を表して、訳者によって微妙に違う。ウォール街〜世界でも屈指の金融街をバックに発せられるこのひとことは、資本主義への痛烈な批判か。雇用主から命令され懇願されても一歩も譲らない。食事も取らずじっと動かないバートルビーは全身で生きて死んだ。悲劇は喜劇になり、突き抜けた青空に孤独な魂がたゆたう。2019/10/23
♪みどりpiyopiyo♪
61
ウォール街の法律事務所で雇った寡黙な男バートルビーは…。■面白かった♪ 中編2作、どちらも「なになに?なんなの?どうしたのー??」って思ってるうちに あれよあれよと事態は混迷を深め。ちょっとした謎解き気分も味わえて、読後ははたと考え込んでしまいました。■作者のメルヴィルは『白鯨』の人。不可解な人物の存在を通して社会の闇を抉る様は南北戦争前の作とは思えないほど実験的で先見性に溢れ。巻末の解説も興味深く、メルヴィルという作家の何たるかが少し分かりました。(1853、1855年。2015年 牧野有道 訳)(→続2018/06/26
らぱん
57
「書記バートルビー」は別訳版に続いての再読になる。彼からの問いである「あなたはその理由をおわかりにならないのですか」をあらかじめ突き付けられた上での結果は、間違っているのはやはり世界の方であり、バートルビーとは聖なる愚者だと確認した。広義では自らの主人公として生きているか、狭義では拝金主義に陥っていないかを訴えてくる。人物造形が素晴らしく、信用のならない語り手による物語の力を存分に生かした秀作である。メルヴィルは生前には高い評価を受けられなかったらしいが、200年早かったのだとつくづく思った。↓2019/09/24
らぱん
52
「漂流船」は初読で「バートルビー」との二編を併せ読むことで理解が深まった。共通のテーマは奴隷だろう。どちらも物語を導くのは信用のならない語り手で、読者をあさっての方へ連れて行こうとする。比べると「漂流船」は冗長にも感じられるが、何度も繰り返される語り手デラーノ船長の認識や判断の揺れる様子はうねる波に翻弄される船のような効果があるように感じた。物語全体も常識や社会通念に揺さぶりをかけ読者に問いを投げかけてくる。「バートルビー」が突出しているせいもあるが「漂流船」は普遍性がやや弱いかもしれない。2019/09/25
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