内容説明
2014年8月に宮内庁が公開した『昭和天皇実録』を丹念に読み抜き、昭和という 時代、昭和天皇という存在をさらに深く記録する、昭和史研究者としての著者の 満を持した試み。
著者は『昭和天皇実録』を、これまで民間に明らかにされなかった国家所蔵の記 録を用いたものである点で極めて重要な文書としながらも、その記述にはさまざ まな意図が隠されており、『昭和天皇実録』を真に意味あるものにするためには、 眼光紙背に徹した読解が必要だと言う。そこで著者は『昭和天皇実録』を歴史を 追って読み込みながら、その都度、著者の昭和史への圧倒的な識見により拡充し、 これまでの歴史研究の成果と突き合わせてゆく。
本書は『昭和天皇実録』をテーマとしつつ、昭和史の新たなスタンダードを確定 する画期的な一冊である。第1巻では昭和天皇の戦争体験を詳細に検証する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
読書実践家
8
昭和天皇を間近で見てきた木戸幸一の存在は大きい。東条英機による独擅場を天皇はどんな心境で見守っておられたのか。理知的な文章。2016/02/03
こまったまこ
4
『昭和天皇実録』の要所要所を引用し、それについての考察と丹念な解説、著者の見解で構成されている。実録は側近や軍人・政治家等の日記や書籍、新聞などあらゆる文献を参考にして編まれている。その中には未公開の文献もあり、今まで分からなかったことも明らかになっている。宮内庁書陵部が「昭和天皇像を明確にし、それにもとづいて記述」しているので実録は未来の為に書かれているようだ。この巻では開戦前から戦時中における天皇の懊悩する姿が描き出されている。陸海軍の総長は天皇に虚偽の報告をし続けて良心の呵責はなかったのだろうか。2016/04/12
N.T
3
昭和史に関わる人物への聞き書きで著名な筆者による「昭和天皇実録」の検証本。 一般人が読むにはあまりに膨大な「実録」を丹念に読み込み分析している。 非常に多くの資料を元に編まれた後世への歴史的報告文書とも言える「実録」はその特性故にそれを読み、理解するには編者の意図を正しく理解する必要があるという。 「実録」やその他の文献を手元に置きながら検証過程を追えれば面白いのだろうがそれも中々叶わないのがもどかしい。 1巻は開戦に至る経緯と終戦に向けた歩みまで。2016/03/20