内容説明
沖縄戦の直後、アメリカ陸軍は兵士向けに、日本軍との戦闘用マニュアル『卑怯な日本軍』を刊行した。その小冊子には、太平洋戦争の末期、アメリカ軍が日本軍に対して抱いていた「卑怯」というイメージがあふれている。
本書の第一章では、その記述や写真・図版をもとに、アメリカ軍がいかに、日本軍の不意打ち、地雷、トラップといったゲリラ戦術を警戒していたのか明らかにする。
第二章以降では、逆に日本軍が作成した対アメリカ戦闘用のマニュアルを紹介する。対米戦マニュアルの原型は対中国戦向けであり、日本軍の戦法についていえば、日中戦争と日米戦争は不可分であった。また、対米戦法の模索をみながら、日本の軍人たちがどこに勝機を求めていたのかを考察。
気鋭の歴史学者が、マニュアルを読む日米兵士の立場から、あの戦争について考える。当時の両国兵士の意識を知ることは、日米関係の将来を冷静に考えるためにも必要ではないだろうか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
71
太平洋戦争末期に米軍内で配布された旧日本軍への対抗マニュアルを皮切りに、米軍が卑怯と称した旧日本軍の戦術、仕掛け爆弾、降伏しての騙し討などを紹介。また、旧日本軍側の対中国、対ソなどの戦いの教訓から作られたマニュアルとその変遷を抜粋引用していく。非合理で精神主義一本槍とレッテルを貼られる、旧日本軍でも現場や上層部では、近代戦に対抗するためには戦力不足であるとの認識があったのは面白い。一度目を通したかった本で借りたが、正直くどすぎるほどディテールに詳しい。飛ばしながら読む。軍オタならおすすめ。文庫化に驚く2018/02/07
nnpusnsn1945
49
かつて中国の「地雷戦」という映画を見たことがある。八路軍が日本軍に地雷やブービートラップを使用して打ち負かす様子が描かれていたが、プロパガンダのみならず戦闘マニュアルとして参考になるのだが、本書のように、中国軍が仕掛け爆弾を使用して日本軍を苦戦させた事実が伺える。また、太平洋戦線では逆に日本軍が米軍に活用しており、米軍を悩ませている。日本、米国のマニュアルから、それぞれ中、日を卑怯者と見なしているのは歴史の皮肉である。ベトナム戦争の罠と比べてみてもなかなか興味深いテーマであった。2021/05/14
おっとー
12
戦時中のアメリカ軍が作成した対日本軍マニュアルが本書の研究対象。味方に化ける、わざとおびき寄せる、こっそり地雷や手榴弾を仕掛ける…などここに書かれた卑怯戦法には枚挙に暇がない。多少の誇張はあるにせよ、こうした罠に引っかかって命を落とした兵士もいたんだなと思うと本当に戦争って空しい。ただ、日本軍に限らず米軍や中国軍も同じようなことをやっていたようで、こうした卑怯な戦法は追い詰められた側が共通して講じる必死の抵抗だった。いろいろな示唆は得られるものの、マニア以外にとっては兵器の記述が多すぎるのが玉にキズ。2020/08/31
BLACK無糖好き
12
日本軍とアメリカ軍の「戦訓」マニュアル本から、それぞれの"敵"をどのように想像していたかを読み解き、日本軍が「対米戦法」をどのように模索していたかも探る。手榴弾や仕掛爆弾、地雷の詳細な効果測定などマニアック過ぎる面もあるが、火力の物量・質とも圧倒的に不利な日本軍が"弱者の戦法"に頼るしかなく、戦場の兵士たちが必死に知恵を絞っていた様子も伺える。日米開戦時 南方へ向かう将兵向けにビジネス新書のようなタイトルの小冊子が作成されたようだ「これだけ読めば戦は勝てる」作者が辻政信との事で思わず苦笑(^_^;) 2016/04/14
どら猫さとっち
8
誰もが知らない戦争が、この一冊にある。地雷や砲弾などを用いて、敵軍を攻撃する。またいろんな手段を使い、相手をかわす。日本軍の戦い方はずる賢い。こうしたアンフェアな方法で、よく戦争を乗り切ったものだ。敵軍からしてみれば、それこそ卑怯と言わずにはいられない。この一冊から、戦争はどんな形であれ、やってはいけないということを思い知らされる。2015/12/19
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