内容説明
五輪代表は誰の手に? 衝撃のマラソン・サスペンス! 大学の陸上部で同級生だった三人が、オリンピック男子マラソン代表・最後の一枠選考レースに出場する。三十歳の彼らにとって、おそらくこれは五輪へのラストチャンスだった。日本最高記録を持ちながら故障に泣かされ続け、「ガラスのエース」とも称された天才ランナー・須田は、最高の練習環境に身を置いて復活を賭ける。陸連批判をして表舞台から去り、四年ぶりに走る武藤は「俺が勝つ」と豪語。そして、優勝経験がなく、“勝ち方を知らない”青山の前には、ドーピングを勧める正体不明の男が接触してきた。青山は卑劣な手段を一旦は拒むが……。スポーツ小説の名手が手がけた、ランナーたちの人生を賭した勝負を活写する、ロングセラー『チーム』の原点ともいうべき傑作長編!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
225
三者三様の同級生がオリンピックのマラソン代表の最後の一枠をかけた熱い話!レース本番までの過程が濃厚でしたね。葛藤、苦悩が濃密でした。当然、青山目線になり、青山に感情移入してしまいましたが、青山は恩師、先輩、後輩、友人等に恵まれたかなと思います。正直、レースまでの過程が重厚なので、読んでてちょっと疲れますが、レースに入ったら一気読みです。勝利した時の気持ちはどういうものか、すごく知りたくなる熱い作品でした。2018/05/12
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
155
堂場瞬一氏の陸上小説第一弾。大学の陸上部で同期だった三人のランナーが、30歳を迎え五輪代表の選考レースに出場する。残る枠は一つ。日本最高記録を持ちながら『ガラスのエース』と呼ばれる須田、人嫌いで利己的な武藤は貪欲に勝利を目指す。一歩引いた姿勢の青山は優勝経験がない『万年三位』のランナー。ある日、青山の前に正体不明の男が現れ、絶対に検出されないドーピングを勧める。拒絶していた青山はライバルの姿を見るうち……。競技者としての限界や引退後の不安、目を背けて来た栄光への渇望……息遣いが聞こえそうな男たちのドラマ。2016/05/10
ケイ
133
『チーム』の時も、学生なりの駆け引きはあったが、社会人レースになるとそうもいかない。ドーピングも含め、駆け引きし、対峙しなければならない相手は様々となる。要求される精神力も、さらにタフになる。彼らのドラマを一気に読んでしまったが、趣味で走っているものからすると、走ることで高揚する場面がもっとほしかったところ。2016/08/18
kanegon69@凍結中
130
いやぁ、やっぱ臨場感が半端ない!本作ではドーピングと言うスポーツ界の闇に焦点を当て、優勝経験のない選手に巧みに忍び寄る様子、なかなか断ち切れない誘惑、自分の実力を卑下する心、でも心の奥底に眠る勝ちたい欲求、揺れる心理状態が余す所なく丁寧に描写されています。最後のレースシーンはやはり圧巻!手に汗握るリアリティの高いレースの描写に痺れます!そしてまさかまさかのエンディング!スポーツ小説なら右に出る人はいないのではないかと思えるほど、凄いリアリティと盛り上がり。スポーツ好きにはたまらない一作です‼️2019/12/10
nobby
130
『チーム』『ヒート』から読む前日談。30才というベテランの域を迎えたマラソンランナーの想い。五輪代表選考レースに向けて、故障・因縁・引き際が描かれる様々な葛藤はとにかく重い。そこに忍び寄る悪魔の囁きは「絶対に検出されない」ドーピング。もちろん肯定する訳はないが、道具やトレーニングなど大金はたいて整えた環境や設備にも確かにアンフェアを感じて複雑…それが明確に誰が決めた誰の為の線引きなのかも難しい。プロローグで見事に3人の現況や背景が凝縮されているので、何となく予測するまま進む展開に気持ちはどんよりしたまま…2017/11/09