内容説明
現場から、渾身の提言!
憲法第9条の下、専守防衛の軍として戦後、一発も実戦で撃たなかった自衛隊。集団的自衛権行使と国連PKOでの武器使用拡大路線で、自衛隊の役割はどう変わるのか。日米同盟と憲法のはざまで、悩みながら海外派兵の実務を仕切ってきた元防衛官僚が、発足以来60年の矛盾に向き合い、拙速な法改正に異を唱える。どんな大義のために殺し殺されるリスクを負わせるのか、国民の覚悟を問う一書。
[内容]
第一章 自衛隊を取り巻く矛盾
1 自衛隊と「国民」をつなぐ
2 変わりゆく時代のなかで
3 矛盾の限界
第二章 鼎談・前線からの問題提起
1 政治の論理と現場の乖離
2 好戦的に変わったPKOと、自衛隊員のリスク
3 憲法と集団的自衛権
4 誰が責任をとるのか
5 日本はどう貢献するのか
第三章 いまこそ自衛隊から平和を問い直す
1 国民の期待と自衛隊内の不満
2 リスクを理解しているか
3 日米同盟を考え直す
4 イラク派遣の成果
5 海外派遣の課題
6 政治と自衛隊、憲法の論点
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
26
民間に被害がないことが明らかな事故は、隠し通せるのではないかという誘惑にかられたが、どこかで露呈。問題は大きくなり、防衛庁は過去にも不祥事あったため不信感を避けねばならなかったという(27頁~)。今や、安保法制で防衛装備庁だからな。おっかね。従来の憲法解釈は、ガラス細工と称したが、安保法制では歯止めなし(63頁~)。テロの標的もおっかね。安保法制下では、自衛隊活動と憲法の適合性は現場で失われる(72頁)。由々しき事態。大切なのは統率で、指揮官の言うことを、隊員に納得させること(113頁)。2015/11/29
coolflat
14
自衛隊の海外派遣は大きく3つの矛盾を抱えている。第一に、自衛隊は外征軍としてデザインされていない。自衛隊の師団の規模(約七千~九千人)は、米軍などと比べて半分程度の人数しかいない。国内で戦うことを前提としているために、補給などの後方支援部隊の規模を小さくしている。第二に、隊員の心構え。PKOなどこれまでの自衛隊の海外活動は人助けという善意が通用していたが、イスラム国など過激派勢力との戦いには通用しない。第三は、憲法との整合性。海外での武力行使を予定していない憲法の下では、警察と同じ法理で働かざるをえない。2016/02/23
禿童子
9
柳澤・冨澤との鼎談の中の伊勢崎賢治の発言:「もともとの動機がドメスティックなものだから、海外に送られた自衛隊の現場に無理が出るのは当然です。でも、もう、この問題に決着をつけるときが来ているのではないでしょうか。自衛隊を法的に軍事組織として位置付ける。そして、海外派遣を禁止することで、自衛隊を専守防衛の軍事組織にする。そして、集団的自衛権と集団安全保障は、非武装のみでの貢献。落しどころとして、どうでしょう。」2015年7月11日収録。2016/05/10
たかひー
1
★★★ もと防衛官僚だけになかなか勉強になる意見があった。2016/04/28