ちくま学芸文庫<br> 歴史 上

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ちくま学芸文庫
歴史 上

  • ISBN:9784480095633

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内容説明

紀元前5世紀の古代地中海世界。スパルタ陣営との大激戦、ペロポネソス戦争で疲弊したアテナイでは屍が累々とし、人びとは疫病と困窮のなか、運命の手の弄ばれるままになっていた。この混迷から立ちあがった著者が綴った大戦の長大な記録が、本書『歴史』だ。四半世紀におよぶ激闘で諸国の力がぶつかりあうなか、何が失われ、何が生まれていったのか? 迷信や伝説を典拠としたヘロドトスと異なり、夥しい資料を駆使し、多様な視点を盛り込むことで実証的「歴史学」の礎を築いたとされるトゥキュディデスが、透徹した眼差しで古代地中海の姿を活き活きと記した不朽の名著。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

壱萬弐仟縁

16
「人間は暴力を振るわれるよりも不正を犯された時の方が強く憤慨するようだ」(071頁)。「富者は富を誇らず、それを活動の糧とし、貧者も貧しきを恥じず、恥ずべきはそれに勝つ努力を怠る事とする」(156頁)。それぞれの立場によって、最善、もしくは、次善策を実行しなければ社会的にはよろしくないであろう。2013/11/23

hurosinki

5
アテナイ・スパルタ間で発生したペロポネソス戦争の戦記。第1章、特に冒頭の「考古学」と呼ばれる部分は権力のパターンに関する史的観察としても読める 国内の安定が権力の構成要素として不可欠であるが(本書下巻の解説と訳者の論文「トゥキュディデスの主観 : 考古記の構造を通して」を参照)、アテナイが敗北した直接の原因は「国内における個人的政争」により内部崩壊をきたしたためである(2巻65章)。2023/07/15

みのくま

4
ヘロドトスの特徴は会話劇と物語の脱線に次ぐ脱線。他方、トゥキュディデスはかなり理路整然としており読みやすい事に驚く。会話劇はなく各ポリス代表者のスピーチが多用されており、事件のあらましも簡潔に要点が突かれている。読みにくい所があるとすれば、急に空間が移動する点であろう。トラキアにいたと思ったらケルキュラにいたりシケリアにいたり、戦線の移動に助走がないので混乱する事がある。ただ、それはつまりペロポネソス戦争がいかに広域に展開していたの証左でもあろう。また、著者がアテナイ人にしてはかなり客観的著述に徹している2023/10/20

富士さん

4
平和と繁栄の下では人も国も良識を保つごとは簡単だ。戦争で余裕を失うと現実に対処するために理性は失われる。独創的で異常な暴力が考え出され、配慮は臆病と、賢明は軟弱と、聡明は怠惰と呼ばれる。極言は信頼に、陰謀は賢さとされ、それに反対すれば鈍いとされる。共犯関係が何よりも強く人を結び付け、良識はそのために敵とされる。無能な善人であることは恥となり、美々しい大義とともに生きるためだけの残虐行為が正当化される。3巻82節p277~p279は、まるで人の歴史をすべて見て来たような話で、本書のテーマだと思いました。2017/04/16

Studies

3
名著で極めて優れたリアリスト2015/05/03

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