内容説明
世間を震撼させた凶悪事件の殺人者たち――。臨床心理士として刑事事件の心理鑑定を数多く手掛けてきた著者が、犯人たちの「心の闇」に肉薄する。勾留施設を訪ねて面会を重ね、幾度も書簡をやりとりするうちに、これまで決して明かされなかった閉ざされし幼少期の記憶や凄絶な家庭環境が浮かび上がる。彼らが語った人格形成の過程をたどることで、事件の真相が初めて解き明かされる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やんちゃジジイ
133
モンスターマザー、でっちあげ、というドキュメントを読んで、思い出したようにこの本を取り出し再読した。世にも恐ろしい殺人鬼達は自らの生い立ちに大問題があった人間ばかりだ。死刑が確定した囚人や凶悪犯人達にどんな過去があったのか追及して、何の為になるのか、と思うのではなく、こういう犯罪が起きたのは何故か?と教訓にし社会全体が今後に生かしていかなければいけないと切実に思う。2017/02/10
しいたけ
86
裁判は罪の重さを測るのであって、決して被告のこれまでの人生の重さを測る場ではない。仕事柄世間から死刑を望まれる子どもに会うことがある。報道される犯人像とは全く異なる。それ故死刑制度については複雑な思いを持つ。それでも「この犯人は死刑が相当」と思ってしまう事件がある。光市母子殺人事件がその一つ。この被告とのやり取りの章で、遺族の本村さんが著者に犯罪のない社会を作るための活動に敬意を表するとエールを送ったという話がある。人間の、一体何が凶悪な犯罪を生むのかを明らかにすることこそが、本当に求められることなのだ。2017/07/09
GAKU
69
宮崎勤、宅間守、畠山鈴香等誰もが記憶に残る凶悪犯罪の犯人達10人に、臨床心理士である著者が幾度もの面会、書簡のやり取りを通し犯人たちの心の闇に迫る。ここに登場する犯人全員、悲惨、凄絶な家庭環境が浮かび上がってくる。全てとは思わないが、凶悪犯罪者を生み出す大きな要因として、家庭環境、特に親の育て方や愛情の欠如があると感じた。ある意味ここに登場する犯人たちも、被害者の一人とも言えるのではないだろうか。刑の執行よりも、その前に治療を要する人達ばかりです。⇒ 2017/07/13
ころりんぱ
47
著者の本は3冊目、医者ではなく臨床心理士と言う立場で凶悪犯を獄中に訪ね交流している。なぜ殺人者となってしまったのか。これを紐解くために、びっくりするほどたくさんの重大事件の犯人と面会している。そこには報道されていない犯人の姿…この本はそんな活動の紹介という感じで、何も知らない私たちに、実はこんな事があったんですよ、と教えてくれる感じだった。ひとつひとつの事件の詳細まではこの一冊には収まりきれないだろうし、書けないことも多いんだと思う。誰でもできる仕事じゃない。プロフェッショナルなんだなぁと思った。2015/05/26
ゆうき
45
凶悪な犯罪を起こした犯人達と接近し、獄中対話を通して心の闇を理解ようとする臨床心理士の著者。犯罪者のほとんどが虐待など、不幸な幼少期を過ごしている。又犯行時に解離状態だったとの事だった。だけど『誰でも良かった』など理不尽で残酷な殺し方をされた被害者の気持ちを考えると、どうしても加害者の気持ちなど思う気になれない。2021/03/05