内容説明
「賭けをしませんか?」と受話器の向こうの女は言った。 「十二歳の夏、あなたは初鹿野さんに恋をしました。しかし、当時のあなたにとって、彼女はあまりに遠い存在でした。『自分には、彼女に恋をする資格はない』。そう考えることで、あなたは初鹿野さんへの想いを抑えつけていたのです。……ですが、同時にこうも考えていました。『この痣さえなければ、ひょっとしたら』と。では、実際に痣を消してみましょう。その結果、初鹿野さんの心を射止めることができれば、賭けはあなたの勝ちです。初鹿野さんの気持ちに変化が起きなければ、賭けは私の勝ちです」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハッシー
199
夏が来るたびに読み返したい物語がある。 改めて読み返してみると、三秋さんの人間の心理を突いた言葉の数々にもう一度ハッとさせられる。 誰しもが持っている身体的なコンプレックス、それにどう向き合っていくか、折り合いをつけていくか、克服するか。普遍的なテーマを持っているから、読む度に新たな発見がある。2017/07/08
岡本
167
表紙買い。終盤辺りで残りページが少ないけど纏まるのかな、と思ってたら前後編だったという。初鹿野の空白の4日間に何があったのか、続巻も買わねば。2017/11/08
ひめありす@灯れ松明の火
99
顔にある痣を通して世界を見つめる主人公も、入院からのボーイミーツガールも、見知らぬ人から公衆電話に掛かってくる電話も、人魚のいる街の高校生も、知っていると言えば知っている。何にインスパイアされたか、それを語ってしまうのは簡単だけど、それだけで語ってしまっていいのかなと思う何かがある。好きだ、とか、うまい、とかそういうのとは少し違って。ピントがちゃんとあってないと言うか色硝子の向こうの世界を見ていると言うか。なんだろう、謎です。三秋さんは一体何を通して世界を見てきたのだろう、と思わせるその正体を見ていきたい2016/02/20
たるき( ´ ▽ ` )ノ
94
『三日間の幸福』が大好きで、この本も読んでみた。話の展開にぐいぐい引き込まれる感じで、続きが気になって仕方ない。どんな結末を迎えるんだろう?2015/10/07
ユザキ部長
83
それはいつもの堂々巡りだった。自分が他人にどのように思われているかなど考えてもわかるはずもない。そんな折りに鳴った公衆電話のベル。伝えてきた人魚姫の式を賭ける事。自分の劣等感と労りの感謝が伝わらないもどかしさ。表面だけで差別する自分の戸惑い。自分と彼女とが絡み合い複雑になっていく。2018/11/15