内容説明
弘法大師空海の足跡をたどり、その時代風景のなかに自らを置き、過去と現在の融通無碍の往還によって、日本が生んだ最初の「人類普遍の天才」の実像に迫る。構想十余年、著者積年のテーマが結実した司馬文学の最高傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
修一朗
125
お大師様の生涯が司馬氏の主観を通して描かれる。天才なんだけれどもありがちな狂気や悲壮感はなく,世俗や政治を否定せず人を味方にできる闊達な人。お大師様の人となりはきっとこうだったんだろうと思わされる。上巻は密教を志して入唐するまで。当時の遣唐使がいかに命がけだったか。それにしてもお大師様の漢文が下船許可の決め手になったとか唐人以上の唐語の使い手だったとか5カ月で梵語をマスターしてしまったとか信じられない天才ぶりだ。密教が当時こんなインターナショナルだったなんて。国際都市長安の繁栄ぶりも楽しい。下巻へ。2024/05/23
遥かなる想い
123
「昭和五十年度芸術院恩賜賞受賞」というので、チャレンジしたが挫折。やはり空海のような大物は読んでいて入り込みにくく難しい。歴史の教科書として読めば面白かったのだろうが…2010/07/31
優希
108
面白かったです。空海の足跡をたどるエッセイのような感じで、空海を取り巻く風景を描いている印象を受けました。全ての煩悩を受け入れる姿を見ていると、その思想には時代の普遍性を見つめる一面もあるように思います。遣唐使として長安に渡った空海は、後の仏教思想にどのような影響を及ぼしていくのでしょうか。下巻も読みます。2018/01/24
kazuさん
106
空海が生まれ、入唐して、密教の第一人者恵果に会うまでが描かれている。空海は讃岐出身の一豪族で、804年、30歳の時に、120人の隋員と共に、唐に渡った。空海の身分は留学生であり、同行した最澄とは異なり、渡航直前に国から認定された僧侶となった。福建省赤岸村に漂着し、その後2400km、福州から長安までの冒険とも言える行程が描かれている。上巻のハイライトは、空海が書いた卓越した漢文が福州の行政官を驚かせて、日本から来た遣唐使としてようやく認められ、下船の許可を得ることができた、と言うくだりである。2023/12/17
金吾
100
小説というより空海を主人公にしたエッセイのように感じました。空海に関しては単一のエピソードは聞きかじっていますが全体を通じて読んだことがありませんので新鮮です。予想以上の波乱万丈の生き方ですので下巻が楽しみです。2022/09/28