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内容説明
靖国神社の思想的根拠は、神道というよりも儒教にある! 本書は靖国神社創設の経緯をひもときながら、文明開化で儒教が果たした役割に光をあて、明治維新の独善性を暴きだす。気鋭の歴史学者が「日本」の近代史観に一石を投じる檄文。「国体」「英霊」「維新」の三章に、文庫化に際して新章「大義」を増補。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
100
著者は中国思想が専門であると思われますが、靖国神社に関する日本人の考え方についてをかなりわかりやすく分析されていると感じました。私は保守的な人間で比較的右翼がかっていると自分でも思っていますが、この本はかなり公平な視点から書かれていると思います。最近の日本会議のメンバーの人などはこのような本を読んだ方がいいと思います。2018/11/06
樋口佳之
25
著者自身の言葉通りの檄文/「明治政府は当初は正しかったのだが、ある時期から道を間違えてアジアへの侵略を開始した」という歴史認識を採らない。「御一新」には最初からそうなるべき芽があった/誓文」という語が示す、その誓った相手は、神々だったのだ。明治天皇は、神々に向かって自分の施政方針演説をした/靖国神社は、徳川政権に対する反体制テロリストたちを祭るために始まった/国内問題だと私が主張するのはそういうわけである。戊辰戦争以来の未解決の歴史問題が、ここにはある。長州藩は京都御所に向かって発砲したことを謝罪したか?2018/01/07
那由田 忠
20
中国思想史専門家が知識をひけらかすだけで、靖国関係の説明は少なくて期待は裏切られる。史観と言いつつ歴史内容を取り上げず、国体や維新、英霊の説明から史観を読み解くと。が、国体や維新は靖国との直接関係なく、英霊も典拠が中国文献というだけの話。吉田松陰などのテロリストが祀られて日本国のためでなく、天皇のために戦死した者を祀ると定義する。維新の志士をテロリストとは言えないし、戦死以外の合祀者も多いのにね。面白い話(維新がrestorationの理由)が少しあるが、専門家の言を期待したのに文章と内容が軽すぎる。2020/08/23
coolflat
13
靖国問題はすぐれて国内的な問題なのだと著者は言う。靖国神社は、「日本国のために心ならずも戦場で散った人たちを追悼する施設」ではなく、あくまでも「天皇のために自ら進んで死んでいった戦士を顕彰する施設」なのだと。ここには「朝敵」は祭られないので、戊辰戦争や西南戦争の「賊軍」側の戦死者は対象にならないのだと。靖国神社の起源は、幕末の動乱の中で勤皇の志士たちが行った同士追悼の招魂祭にあったわけだが、それが靖国神社へと発展するのは西南戦争がきっかけだった。「官軍」と「賊軍」の区別。これが靖国の原点だったわけである。2014/12/27
無重力蜜柑
11
靖国神社にまつわる(主に右派の)ディスコースを文献学的に分析し、その思想の歴史的背景を明らかにして相対化してやろうという本。著者が日本史や日本思想ではなく中国思想の専門家である点と、かなり軽いエッセイ的な書き方をしている点から、記述の実証性については相当差っ引いて読むべきだろう。しかし着眼点や手法にはオリジナリティがあり、これ自体が一個の思想書としてかなり面白い。そんな筆者の主張は、「靖国問題とは外交問題という以前に国内問題である」というものだ。そして彼は第二次世界大戦ではなく明治維新に目を向ける。2024/04/16