内容説明
被爆樹を知っていますか? 被爆直後は「七十五年間、草木も生えない」と言われたヒロシマの町。ところがその年の秋にはアサガオなどが、さらに翌年の春を迎えると、クスノキ、イチョウ、サクラ、ソテツ、アオギリなどの木々の折られた枝、焼かれた幹、かろうじて残った根から、次々と新芽が芽生え、新しい命が育ち始めました。広島市では爆心地を中心に半径およそ2Km圏内の58か所、約170本の樹木を「被爆樹木」として認定しています。本書は被爆樹1本1本を訪ね歩き、その木について紹介するとともに、被爆当時の記憶のある方々や「被爆樹木」を守っている方々のお話しも伺ってまとめた一冊です。被爆樹は原爆被害の「生き証人」として、これからも無言で人々に核兵器の恐ろしさと、平和の尊さも伝えていくことでしょう。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
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被爆して枯れることなく生き残った樹を紹介していく本。幹がねじれたり、火災による傷痕が残ったり、洞ができたりといった樹の姿が痛々しい。それでも、どの樹もあの地獄のような焦熱地獄から甦ったことに、畏怖の念を覚えた。爆心地から一番近いところに立っていたヤナギは、翌春には芽を出したそうだ。物言わぬ樹という存在は人間が想像する以上に強靱な生命を持っているのかもしれない。その命の強靱さに心を打たれた。たとえ原爆のことを語り継ぐ人間がいなくなっても、これらの樹は無言の証言者として重要な役割を担っていくはずだ。2015/12/18
Nobuko Hashimoto
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広島の原爆で傷つきながら生き残った被爆樹木をていねいに紹介する本。被爆樹木を守った人々の証言も掲載。被爆樹をめぐるモデルコースも。被爆者が高齢化し、被爆体験の伝承はあとの世代に引き継がれようとしているが、人間や建物等よりも寿命の長い樹木は、「現場」に残る「現物」として悲劇と復興を伝えてくれる存在になる。それにしても植物の生命力はすごい。児童書の『広島の木に会いに行く』とともにおすすめ。学生と広島スタディツアーに行くときには、2冊を参考に、被爆樹にも会いに行きたい。2018/08/12
えいとうっど
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極めて個人的なお気に入り度合い:★★★★☆4点 広島の街中をランニングしているとあちこちで被爆樹と出会います。たくさんの人の生き死にを見てきたんだなぁと畏れます。2017/06/26