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内容説明
時は八世紀半ば、平城京の都が栄えた頃。いずれ氏神に仕える者として、館の奥深くで育てられた藤原南家の娘――郎女は、ある年の春分の日の夕暮れ、荘厳な俤びとを、二上山の峰の間に見て、千部写経を発願する。一年後、千部を書き終えた郎女は、館から姿を消し、ひとり西へ向かう。郎女がたどり着いたのは、二上山のふもと、女人禁制の万法蔵院。結界破りの罪を贖うため、寺の庵に入れられた郎女は、そこで語り部の姥から、五十年前に謀反の罪で斬首された滋賀津彦と耳面刀自の話を聞かされるのだが――。第18回文化庁メディア芸術祭[マンガ部門]大賞「『五色の舟』(原作:津原泰水)」 受賞後第一作! 日本民俗学を築いた折口信夫の傑作小説を、初読四十年にしてついに漫画化。古代へと誘う魂の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
58
折口の『死者の書』は何度読んでもあの呪言めいた文体に絡め取られてしまい、黄泉の国を覗き込んだようなイメージしか残らないのだが、こちらは中将姫を中心に描いているせいか著者の絵柄のせいか、どちらかというと平城京の空のような爽やかな印象を受ける。著者の独特のタッチも輪をかけていて、冒頭の当麻寺と二上山を描いた墨絵には一気に引き込まれるなあ。そういう意味ではこれは紛れもなく近藤ようこの『死者の書』である。ただもう一人の主人公ともいえる大津皇子の影が薄い気がする。原作だと二人の幽明を隔てた交感が描かれてたけど。2022/04/01
井月 奎(いづき けい)
47
真珠はなぜ美しいのでしょう。どこまでも深い白は虹色を含み、目でその虹を追っても見えるのはつややかな白だけです。そしてなぜ、その美しさを持つことができたのでしょう。貝に抱かれて育った玉は軽く静かに幾重にも光をまとい私たちの目に悦楽をくれます。なぜ、ときかれても私に答えはありません。ただ美しいとしか言えず、思えぬのです。この物語もまた、美しい思いとふるまい、真珠のような心と行いが私の胸を打ちますが、なぜ、とはわからず、どう思うかも定かではないのです。ただただ阿弥陀ほとけの姿を追う、そのことが美しいのです。2019/02/14
はつばあば
46
折口信夫の死者の書は未読。それでもちょっとは触ってみたいと。奈良の当麻寺と中将姫。中将姫伝説は子供の頃寝物語に聞かされたものだ。・・したしたした・・。生と死の世界が繋がっているのを忘れた私達がいる2016/07/08
アマニョッキ
38
ずっと読みたいと思っていたやつ。やっと読めました。折口信夫さんの原作は未読ですが、わたしは近藤ようこさん目当てもあるのでこちらでもう大満足。なんともいえない魅力的な線で描かれるこの時代が本当に好きなのです。2020/07/09
澤水月
34
美しいが恐ろしくもある古代。女が、いや人が言葉…知恵を身につけることはそれなりの代償を払うことでもあった。打ち捨てられつつ貴(あて)な郎女の姿が凛としている2016/05/08