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内容説明
「ああ小,小,男子など何でもない!」公家の姫君から女盗賊へ,戦国末世を流転する美貌の烈女いちご姫.二葉亭四迷と並ぶ言文一致の先駆,山田美妙(1868-1910)の新奇華麗な文体に明治の世は目をみはり,若き美妙は一躍文壇の寵児となった.挿絵の裸体画が論争を巻き起こした「蝴蝶」,「武蔵野」「笹りんどう」と同時代評を収録.注・資料を収録.
目次
目 次
武 蔵 野
蝴 蝶
い ち ご 姫
笹りんどう
山田美妙大人の小説(内田魯庵)
蝴 蝶(内田魯庵)
近日出色の小説(抄)(内田魯庵)
夏木たち(石橋忍月)
国民之友二小説評(依田学海)
解 説
注(大橋崇行・福井辰彦)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
柊渚
28
かつて恋慕に紅潮していた乙女の頬は返り血に染まり、吹き込む風が血腫い香を運ぶ。公家の姫君から女盗賊へ、戦国末世を流転する美貌の烈女。半分に手折られ道に打ち捨てられた無残な梅の花に、その末路を見る。いちご姫ちゃん。お名前は可愛らしいけれど、昼ドラ顔負けのどろどろ展開を繰り広げていきます🍓 二葉亭四迷と並ぶ言文一致体の先駆者であり、一躍明治文壇の寵児となった山田美妙。新奇華麗な文体で綴るのは、世の不条理や無常観。軽妙な語り口にはぐいぐいっと引き込まれていきました。2021/12/07
syaori
25
鎌倉や南北朝、戦国初期を描いた作品が収められています。独特の美文調で、独特の美意識を持った物語が展開されます。『武蔵野』の夫と婿が死んだという知らせを受ける母に追い打ちをかける終わり、『胡蝶』で「鮮血の紅を縦横に塗ッ」た胡蝶にもたらされる知らせ、何というか無残絵を眺めているような楽しさがあります。『いちご姫』は長い分、展開に無理のあるところもあるのですが、ある意味無垢で男勝り、自分の欲望に忠実な美しい姫が、そのためにたどる数奇な運命や、それに巻き込まれる人々を見ているのはやはり残酷な楽しさがありました。2016/05/05
みつ
23
『いちご姫』という題名だけからは、どこかライトノベル的な雰囲気も漂わせるが、言文一致体の創始者のひとり山田美妙の作だけに、もちろんそんなことはない。併録の3短篇も含め、源平合戦、鎌倉幕府滅亡時、応仁の乱前後といずれも過去を題材に採る。地の文は「です・ます」調で読みやすい一方、会話の語尾が「おじゃる」であるのは、著者によれば当時の会話体を再現したとのことであるが、やはり奇異の感あり。この本のほとんどを占める長編『いちご姫』の主人公の烈女ぶりは凄まじく、将軍の命を狙っているはずが、全く違う話になっていく。➡️2023/11/12
蛇の婿
12
山田美妙さんの微妙な短篇集。明治の言文一致の文学史の上では重要な人らしいのだけれども、少なくともこの本に収録された作品は私にはほぼ全く合わなかったのでなんだかなぁと。…女性のある種の魅力をテーマに、古今の日本や中国の古典を引用し応用し独特の間投詞を挟みながら非常に飾られた独自の文体で書かれたその文章はとても興味深いとは思いますが、悪く言えばテーマが「女の浅ましさ」で、ゴテゴテ飾られた読者に知識を強要する文章は読んでいて非常に鼻につきます。…はっし、とか、しっ!とかもなんぞそれ…残念ながら楽しめなかった…2018/01/17
シンドバッド
10
岩波文庫 日本近代短篇小説選 明治篇1から連続して、山田美妙を読む。 胡蝶・武蔵野を読んでから、早くも40年余。現代仮名遣いになったことで、美文調は少し損なわれているものの読みやすくなった。加えて、いちご姫が読めるとは!この作品の評価はいろいろあるものの、私は、美妙の意欲を大いに認める。2014/12/29