講談社文芸文庫<br> 凡庸な芸術家の肖像 上 マクシム・デュ・カン論

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講談社文芸文庫
凡庸な芸術家の肖像 上 マクシム・デュ・カン論

  • 著者名:蓮實重彦【著】
  • 価格 ¥2,299(本体¥2,090)
  • 講談社(2015/08発売)
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  • ISBN:9784062902717

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内容説明

「凡庸」とは「すぐれたところのないこと」などといった相対的、あるいは普遍的な概念ではない。ルイ・ナポレオンのフランス第二帝政期に誕生した、極めて歴史的な現実であり、その歴史性は今なおわれわれにとって同時代のものなのだ――大作『「ボヴァリー夫人」論』(2014年)の執筆がすでに開始されていた1970年代、『「ボヴァリー夫人」論』を中断してまで著者を執筆に駆り立てた、現代批評の頂点。

目次

講談社文芸文庫版への序文
『凡庸な芸術家の肖像』への序章
『凡庸な芸術家の肖像』第一部
I 蕩児の成熟
II 蕩児は予言する
III 特権者の代弁
IV 開かれた詩人の誠実
V 韻文の蒸気機関車
VI 凡庸さの発明
VII 旅行者の誕生
VIII 芸術家は捏造される
IX 仮装と失望
X 写真家は文芸雑誌を刊行する
XI 編集者は姦通する
XII 友情の物語=物語の友情
XIII 『遺著』という名の著作
XIX 自殺者の挑発
XV 教室と呼ばれる儀式空間
XVI 説話論的な少数者に何が可能か
XVII イデオロギーとしての倦怠
XVIII 新帰朝者の自己同一性
XIX 日本人の模倣癖と残忍さについて
XX 才能の時代から努力の時代へ
『凡庸な芸術家の肖像』第二部
I 崩壊・転向・真実
II 夢幻劇の桟敷で
III 外面の痛み=内面の痛み
IV シチリア島の従軍記者
V ふたたび成熟について
VI バヴァリアの保養地にて
VII 徒労、または旅人は疲れている
VIII 文学と大衆新聞
IX 変容するパリの風景
X 物語的配慮とその許容度
XI 黒い小部屋の秘密
XII パリ、または数字の都市
XIII 排除さるべき落伍者たち
上巻への註

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

しゅん

15
名著中の名著。「フローベールの恩知らずな友人」としてしか文学史に登場しない作家マクシム。「凡庸さ」という概念は19世紀中葉に発生した歴史的なものであり、それが現代の我々をも規定していることを証明するための長尺な物語は、一人称が「話者」、「わたし」は語り手ではなくマクシムを表すための代名詞として使われるという破格の人称操作により、語ることそのものに含まれる虚構性を暴いていく。物語であり同時に批評でもあるような言葉の複数性は、我々の貧しさを鋭く刺せば刺すほどに豊かに感じれられていく。前代未聞の読み心地だ。2017/12/31

しゅん

9
再読。ここで紹介されているマクシム・デュ・カンの書籍が全く面白くなさそうなのにも関わらず、マクシムを物語る本書がひたすら面白いことの不均衡を改めて味わう。「芸術家とは、この(=自分を芸術家にしたい)欲望の共有者たちを示す厳密に歴史的な名称に他ならない」から「あらゆる芸術家は、定義からして凡庸な連中なのだ」という文章に出会った時の、胸がすくような気分はなんなのだろう。本書を含めて優れた「芸術」と思う対象は沢山あるが、ではその製作に関わる人々を何と呼べばいいのだろうか。この問い自体が間違っているだろうか。2021/10/08

三柴ゆよし

9
じぶんが批評なるものに求める「エモさ」(大嫌いな言葉です)、そのすべてが詰まったと言っても大袈裟ではない感動的な書物。感想は下巻で。2020/10/28

hitotoseno

8
『『ボヴァリー夫人』論』によると、『ボヴァリー夫人』の話者は、1843年(つまり研究者たちが『ボヴァリー夫人』の時代設定と想定している年代)にパリ〜ルーアン間に開通した鉄道について、それが元からないもののごとく見做して物語を進めていると思うと、ある時急に「汽車駅」の存在に言及し始める、といった具合にとにかく融通無碍な扱い方をしているという。それを読みながら、ふと本書にも「韻文の蒸気機関車」という章があることを思い出した。2020/10/30

kana0202

3
感動的な書。凡庸という、現代に生きるわれわれが避けて通れないものが、いかにデュカンという人の生の周りに吸い付けられたか、いや、逆に凡庸という磁場に引き込まれ続けた男としてのデュカンがいかなる生をおくったか。そこに近代的な装置とそれに伴い、生じてくる今では凡庸としか映らない様々な、身振り。芸術が意味もなく崇拝され、音楽は意味もなく脱政治化された現代になんらかの気詰まりを感じる人々にとって、歴史化、虚構化の作用の不可視の浸透を自覚させ、凡庸を肯定的に、しかし、それに同調せず生きるために役立つのではないか。2021/11/07

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