内容説明
小さな入り江と低い山並みに挟まれた土地に十歳の尊は連れて来られた。言葉が話せず体も動かせない兄と尊を、都会の狭い部屋に残していなくなった母があれほど嫌っていた田舎。豊かな自然と大人たち、霊的なるものに慈しまれ、尊は癒されていく。芥川賞受賞作「九年前の祈り」に連なる<希望と再生>の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たびねこ
8
著者の作品は初めて。想像力が限りなく膨らむ、いろいろな解釈ができる。たとえば「大きなもの」ってなんだろう。子供のころ(それも小学校低学年以下のころ)は、空間も時間も飛び超えてどこへでもいけるような気がしていたものだ、そんなことを思い出した。2018/12/02
金平糖
5
B。2019/11/22
いのふみ
5
土地をめぐる創造力。行間に折り畳まれている、登場人物どうしの関係性がふとした瞬間に突如溢れるようだった。2016/05/31
つな子
4
本屋でぱらぱら読んで、好みの文体だったため購入。視点がふわふわ移動して自他と時間が曖昧になる。行動の是非を問わず断罪もなく認知は偏り続ける。人が温かすぎる気来もあるが本当は世界はそうしたものに満ちているのかもしれない。それにしても鉤括弧を与えることのできる方言があるのは羨ましい。2015/09/04
ペンギン
3
最初はキャラクターについての説明が少なく曖昧なまま続くので人間関係を把握するのに時間がかかるが徐々に明かされていく。物語としては過去のトラウマと移住した土地の霊が混ざり合い癒しに還元されていくという筋なのだが、全体として情景描写よりも心情の描写のほうが多いので、作品の全体像が掴みづらいという難点はある。また時間軸もころころと変わるので、慣れるまでに時間がかかった。これは読み手である自分に問題があるのかもしれないが、作品を通じてのテーマ、なにを伝えたかったのかがいまひとつわからなかった。2015/10/03