内容説明
戦史の研究に没頭している孫武は、戦争に勝つには勝つだけの理由があり、負けるには負けざるを得ない理由があることを知った。呉楚の確執が続く古代春秋時代の中国。楚への復讐に憑かれた伍子胥の計らいで呉の将軍となった孫武は、独自の機略で楚軍を打ち破り続ける。孫子の兵法で名高い孫武を描く歴史小説。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
83
宮城谷昌光が出てくるまでは、中国の歴史小説を書いてくれる 作家も少なく、海音寺潮五郎の本は本当に貴重だった。日本でも有名な孫子の兵法。 日本人であれば、ちょっとは聞いたことのある中国の古代の話を 描いてくれた名作だと思う。 2010/08/01
BIN
7
上巻は孫武。斉から移住してきた豪族になっていて、戦史オタク。気弱な性格であまり口出ししないけど、呉に登用された後は普通に喋りまくっているので、設定を忘れているんじゃないかとも思ってしまった。左氏伝や越絶書などから推測されていることなど出典が書いてあるのは良い。孫武ものはどうしても伍子胥ものになりがちだけど、一応伍子胥の分はできるだけ少なくしたのかなあという印象です。もっと孫子の兵法を引用しての解説があってもよかったような気もする。2023/07/05
しんすけ
7
初読は20代半ばだったが、本書によって中国古代史が奥行きある映像としてぼくの中に定着した感がある。本書は、『左氏伝』・『呉越春秋』・『史記』の各所に記述される挿話を海音寺の想像力が活性結合させて一編の物語を為したとも云える。10代から『左氏伝』・『史記』を拾い読みしていた関係もあり、曖昧だが中国古代史に関するイメージは持っていた。が、ここまで壮大な物語が出来上がっていることに一種の驚愕すら感じたものだった。2017/08/20
パーやん
3
孫子を読んでみようかなぁ...と思って、読みやすそうなモノを選んだが、この海音寺版上巻は孫武自身の生涯を描く事で孫子の兵法を語っている。多分、オリジナルはもっと詳細な内容なんでしょうが、この本では戦争を忌むべきモノとし、戦争を回避する為に孫武が如何に振る舞ったか、戦いに到っては如何に戦うか...を書いている。気弱で恐妻家の孫武に笑います。2017/10/11
さと
3
孫武編。「戦って勝つのではなく、すでに勝っているものを自ら確認し、敵に確認させるために行わるべきもの」という考え方好きだ。事前の準備を入念にやることの大切さを説いたものとして理解。2013/08/18