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内容説明
著者はいう。日本からみた世界はいま、中国とアメリカによって説明されることがほとんどだ。しかしいま、ほんとうに必要なのは日本から世界をどうみるか、という視点ではない。中国が日本や世界をどうみているのか、あるいはその主語を韓国や北朝鮮に入れ替えたとき、彼らが何を考えているのか、である。そうした問題意識のもと、本書は独自情報や現地発の報道を立体的かつ丁寧に組み上げながら、東アジア情勢がどのような力学によって、どちらに動いているのかを明らかにしていく。その視点の基礎を成す要素は「価値観」ではなく、各国の「利害」だ。日中関係はなぜいま改善しているのか、中国が図ろうとしている「脱露入米」とは何か、イギリスはどうしてAIIB(アジアインフラ投資銀行)に参加したのか、日朝交渉が必ず行き詰まるのはどうしてか……その答えが日本メディアの論調とは大きく異なることに、読者の方は驚くことになるだろう。ならば、その新潮流のなかで「価値観外交」を全面に掲げる安倍政権の手法はそこまで効果的なのか。日本外交に対する痛烈な示唆までをも含みながら、中国を知り尽くした気鋭のジャーナリストが描き出す極東コンフィデンシャル。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ZEPPELIN
9
価値観で動いているのは日本だけで、海外では利害が基準となっている。日本のマスコミは、日本への賞賛か、または脅威かといった観点でしかニュースを分析しないので、その裏側が理解できない。結果、国民もマスコミ以上の意見を持つことが出来ない。米中は一触即発の状態であるとニュースは語るが、中国は脱露入米を目指していると富坂さんは説く。何が正解か現時点では分からないけれど、国民の感情が政治の手足を縛ることは結果的に国益を損なうことにも繋がる。政治家の質は国民の質であるとも言われる。国民も賢くならねば2015/08/19
路地裏のオヤジ
6
日本は自国の価値観で外交を行うが、他国は利害で動くというのは当然のことだが、なるほどと理解できた。国内では、そうした報道が多いので、つい誤解してしまう。2021/01/03
Kentaro
6
北京大学中文系に留学経験を持つフリージャーナリストの著者が、日中関係を中国側の報道から、日本側からでなく、中国側の視点を読み解いた内容でした。 例えば、日本にとってはまた歴史を直視せよと日本を糾弾している演説の中にも、日本の軍国主義が中国人民に大きな被害をもたらし、と語ったあとに、最終的には日本国民も被害者になったと付け加えられている。 この表現は、1972年の日中国交正常化のプロセスに遡る。戦死遺族のわだかまりを払拭すべく、中国共産党が説得したロジックが日本の国民も同じく被害者だったという表現であった。2018/08/31
プレイン
6
外交の難しさを痛感した。日本の一方的な価値観だけでは諸外国との関係をうまく立ち回れない。中国、北朝鮮、ロシアなどしたたかだ。我々国民ももっと世界に目を向けて目先だけの感情に流されず、理想的な価値観ばかりを追い求めず利害関係をよく見極め世界と協調して欲しい。イギリスのAIIB参加に驚いているようでは何の思慮もない。国民がバカだとマスコミも外交官、政治家もたかがしれている。2015/08/25
totalEclipse
3
この本は一読の価値があると思う。現在の状況だと国全体の雰囲気が中国や韓国に対して感情的になっている面は否めないが、本書を読めば、もっと冷静に相手国の真意を分析し、切るカード、タイミングを見計らって上手に付き合っていかなければならないことに気づかせてくれます。2015/10/20