内容説明
世界的に「民主主義の危機」が蔓延する現在、日本に真の民主主義を確立するために何が必要か。人気哲学者が民主主義をキーワードに、政治哲学、政治史を解説、現代政治の最前線とその展望について明らかにする。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
26
今、日本で起こっていることは国家権力の肥大化(026頁~)。昔も今もではないか? 殊に最近ではという意味だろう。市民は自由を取り返すために立ちが上がり、自由があることは、自分で自分をコントロールできること(053頁)。不自由が如何に不自由なのかということか。古代ギリシア以来の市民社会(ソキエタス・キウィリス;ラテン語)の概念では、国家と市民社会は分かれておらず、共同体=政治的社会(065頁)。革命の本質:市民の覚醒(121頁)。2015/09/13
三上 直樹
4
『永続敗戦論』の面をつけながら、前半では明治維新そして敗戦でも維持された天皇制を軸にした日本の特性をえぐり出し、後半では最新の政治哲学を敷衍しながら、次の70年で進めべき方向性を示すという労作。 非常に共感を持って読みましたが、これが変わらなければならない政治業界の人間そして国民に届くかどうかが最大の壁なのが、何といっても日本の課題です。2015/05/31
とーとろじい
3
小川は「開かれたコミュニタリアニズム」と「理に適ったプラグマティズム」が日本の政治風土を変える指針になるという。ジェリー・ストーカーの政治参加の分類のうち諮問や共同統治という選択肢は魅力を感じるが、小川はそれよりも討議(熟議)に期待している。私が思うに日本人の道徳観では統治者の意識がないために政治参加が拒まれていると思うのだが、政治哲学よりもそうした対人道徳の分析を主眼にしたほうが主張に深みが増すのではないだろうか。2021/11/04
周参見
3
タイトルから見てわかるように、白井某の永続敗戦論にインスパイアされた国際政治学関連の本である。私は白井のドヤ顔が気に入らず、永続敗戦論は読んでいないのだが、特に問題なく読めた。というのも、小川の議論は白井にインスパイアされたとはいえ、内容的に依拠しているものではない。もっと伝統的な政治哲学の幅広い知見をもって、永続敗戦の二重構造を脱するアイデアを語るものである。明治維新を中途半端な革命として、日本には民主主義が根付いていないこと、天皇制の問題に言及している点が興味深い。2015/08/22
読書国の仮住まい
1
日本に民主主義が根付いていないのは我が国が革命を経験していないからという。 よって国家をコントロールする術をしらないし、国家を担う成員としての主体性が欠けていると。 その結果何が起きているかと言えば国家権力の肥大化である。 その体制変革を阻む勢力が保守と呼ばれる。 現状享受型の気質、理想を抱かない人間観を持つ現実主義、人間の理性を万能視する合理主義への批判。 民主主義における革命の意義とは市民自らが国家をコントロールする力を得ること。 一人ひとりの主権者が自覚と自信を持つことが魂を吹き込む要素となり得る。2022/03/03