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内容説明
故郷で悶々とした生活を送るなか、フレデリックに思わぬ遺産がころがりこんできた。パリに舞い戻ったフレデリックは愛をうちあけ、ついにアルヌー夫人から媾曳きの約束をとりつけることに成功する。そして、運命のその日、二月革命が勃発するのだった……。フローベールがみずからの青春時代に材をもとめ、多彩な登場人物を配して時代の精神史を描こうとした、自伝的作品にして歴史小説の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
扉のこちら側
96
2016年380冊め。【187-2/G1000】坂道を転がるように落ちた一目ぼれから恋が始まったように、一見起伏に乏しいようなフレデリックの感情は激情とも言える。ただそれは、あまりよい方向には彼を導かず。アルヌー夫人、ダンブルーズ夫人、ロザネット、ルイーズの四人の女性の存在はおもしろかったし、革命のパリの雰囲気も感じられた。2016/06/07
藤月はな(灯れ松明の火)
90
『ルルージュ事件』がきっかけで知り合った読友さんの呟きがなければ、多分、読まなかった本でしょう。自由革命から二月革命へのフランス動乱期と共に男の愚かさも炸裂する巻。子供を妊娠し、堅気になる苦労も惜しまないロザネットを「売女」と罵り、意識して会わないアルヌー夫人へのあてつけでシジーに婚約を申し込む、結婚を迫るダンブルーズ未亡人になおざりに承諾するフレデリックに「最低・・・」と呻かずにいられない。同時に貴族の破産の悲惨やセネカルの変成ぶりに『レ・ミゼラブル』には書かれない革命と人間の暗部を見る。あゝ、無情。2017/04/16
巨峰
81
下巻では、2月革命下のパリで右往左往する社会が背景となる。ただ、「二都物語」などに比べると物語にその社会情勢が及ぼす影響はそんなにない。というのは主人公フレデリックがあまりに自分勝手で適当すぎるから。この人がどんどん生きにくくなるのは社会情勢のせいじゃないわ。どんな社会でもこの人は何もできないよと思ってしまう。最低最悪な主人公だと思うんだけど、その彼自身の行いのせいでか、最後には彼を騙そうとか貶めてやろうという人しか彼の周りに残らなかった感じ。競売の悲惨なシーンに繋がる。それでも、面白い小説でした。2017/12/11
のっち♬
63
アルヌー夫人への恋慕を募らせつつも、主人公は失意の中、肉惑的なロザネットや権力者ダンブルーズ夫人の愛人になる。故郷には彼を慕うルイーズも。四人の女性との並行した恋愛や、出会った様々な人から施される『感情教育』による彼の変化も魅力だが、二月革命の模様も生き生きと活写されており、人と歴史の動きを巧みにシンクロさせて、クライマックスを形成していく。ストーリーは次第にスピード感を増し、終盤は息をも持つかせぬ展開。離別の場面も美しい。「感情に重きを置き過ぎた」ために、政治面も恋愛面も実らない彼の姿が空虚感を残す。2018/07/20
NAO
63
めまぐるしく移り変わる時流にうまく乗った者もいれば、乗り切れずに破滅する者もいる。何度か代議士に打って出ようとしたものの、フレデリックは結局何にもなれないまま、女たちとの浮名を流し、ただ無為に財産を食いつぶしただけ。動乱の時代に生きるのは、大変なことに違いない。だが、この喧騒の中でのフレデリックの停滞は何としたものだろう。感情教育。教育というと、そこには良い結果が予測されるが、フレデリックにとっては、未来は明るいものではなかった。それでも、女たちとの恋愛経験は、彼をいくらか大人にしたのだろうか。 2017/01/12