内容説明
ザザーッ ザーッ ザザーッ……
聞こえるかい?
ホワイト・ノイズの彼方からぼくたちを呼ぶ、せつなくおぞましい声が──
春の土曜日の昼下がり、親友の高橋と行った奇妙な見世物、〈カメラ・オブスキュラ〉。そこに映し出された水族館には、絶対にあるはずのない地下への階段が存在した。恋人の良子に誘われて試したこっくりさんは不気味に告げる。「チカニハイルナタレカヒトリハシヌ」! 〈霊界ラジオ〉から聞こえてくる謎めいたメッセージに導かれ、ぼくたち3人のせつなく残酷な1年が始まる……。伝説の青春ホラー・ノベル、電子書籍版で登場!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
74
再読。オカルトホラー小説。カメラ・オブスキュラから始まりこっくりさん、そして…という風に、謎はどんどん広がっていき、ネタバレになるから言えないけど、大風呂敷の広げ方が只事ではない。しかもただ広げるだけなら誰でも出来るけど、その道の専門家の著者らしく広げ方が実に見事。まさか高校生活が×××××や×××××に繋がるなんて、思いもしないし。畳み方もホラー小説としては鉄板で、確かな手腕を感じさせるなあ。確かなはずの日常が侵食されていく恐怖と高校時代を思い出すと感じるノスタルジア、両者共に持ったいい作品だと思う。2021/07/21
眠る山猫屋
63
以前から気になっていた一冊、この違和感に満ちた雰囲気が、読み手を異界に誘う。幻燈のような見せ物テント、こっくりさん、霊界ラジオ。不穏な小道具が高校生たちの夏を見たことのない景色に彩っていく。親友が狂気に浸食されていく恐怖。霊界ラジオは霊界からの電波を受信するだけじゃない、金星の歴史を知ることも出来るんだ。水族館を建てた一族の異端者、シャングリラへの探訪者の影がちらつく。何が起こったのか、誰が糸を引いていたのか。主人公は“正しく”還ってこれたのか。最後まで蜃気楼の向こう側に手を伸ばすような違和感が味わえた。2020/10/22
へくとぱすかる
54
青春アドベンチャーによるドラマ化を聴いてから、初めて再読してみた。放送と比べてディテールの違いが興味深い。何よりもロックバンドの存在と、英子さんが結婚していること。ドラマは本筋に影響しない範囲で、まとまったエピソードを刈り込んでいることがよくわかる。作者によれば、ジュブナイルの形は偽装であり、全く異なった種類の物語であるとのことだ。次作の「アムネジア」と同様に、解決されない物語が目的だろうか。普通には青春ホラー小説として読めるのだが、それにしてもすごく怖い物語であり、解決されないことが効果を高めている。2014/08/08
こよみ
25
もやもや感が残るかんじそれがいいんだろーけど2013/05/27
kei-zu
22
Twitterの紹介で知り、手に取ったら大当たり。目が回るような展開が読者の正気を惑わせる。 著者は幻想文学の研究者(英文学者)であり、実名での著書は手に取ったことはないが、折に触れて目にした。こういう「追いかけてくる本」って、あるんだよねえ。 よくこんな本が角川スニーカー文庫から出たなと思ったら、絶版書籍の復刊とのこと。角川書店の英断にただ感謝です。 万人にオススメとは言いませんが、これを読んでるあなたのアンテナには引っ掛かるはず。ラジオのホワイトノイズの向こう側から、ほら(手記はここで途切れている)2020/12/04