- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
19世紀、錬金術などの秘術でしかなかった<オカルト>は「再現可能性」と「客観性」という二つの公共性を獲得して<科学>になった。そして今、科学は極端に難解化して普通の人には理解不能となる一方、現代オカルトは「かけがえのない私」探しの魅力的なアイテムとなった。科学で説明できることとできないことは何か?科学で得られない「答え」はオカルトによって得られるのか?人はなぜオカルトに走るのか?目次は、第1章:科学の起源とオカルト、第2章:オカルトから科学へ、第3章:科学の高度化とタコツボ化、第4章:科学が説明できること説明できないこと、第5章:心の科学とオカルト、第6章:現代社会とオカルト、第7章:科学とオカルトのゆくえ。際限なき「原理への欲望」と「コントロール願望」という共通項から、<科学>とその影であり、鏡でもある<オカルト>の関わりとゆくえを解き明かす「超」刺激的論考。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nizimasu
6
著者の名前を気にせずに読んでいたら途中で池田先生だったことに気づく。こんな軽めのタイトルまで手がけていたとは驚いたがその筆致はいつになく軽快かつ辛口。オカルトの隆盛と「かけがえのない私」を肯定してくれるオカルトの存在は実に今日的とも言える。つまりかけがえのない私を認めるのは家族でなくてもオカルト的なおまじないでもいいし、特殊なUFO体験でもいいというのが人間の欲望らしい。さらに人間は幻覚ですらそれw特殊な経験として人生が変わってしまうというなんというご都合主義。それは科学的でないというのが本書だ2019/01/24
もりもり
5
錬金術はオカルトの一種で、オカルトとは科学ほど公共性・再現性を持たない科学のようなもの。カルトは、オカルト的な方法で「かけがえのない自分」を求める新興宗教。科学もオカルトも、自分をコントロールして周囲と差別化するために用いられる。これらの行き着く先(サイボーグオリンピックとかバーチャルリアリティの話)を想像すると恐ろしい。最終的に人間はやはり「脳化」してしまうのか!私はそれは何となく嫌なので、科学が進歩しても生身の肉体を大切にしたいと思った。2012/02/24
茶幸才斎
5
科学の扱える対象とは何か? なぜ非科学に心惹かれるのか? 大学新入学生に読ませたい程の、非常にいい内容の本なのに、題名の陰気さで損をしている。科学とは、自然界で繰り返し起こる現象に対して、(因果関係ではなく)おおよその対応関係を抽出する術である。しかし、すべての対応関係が引き出せるとは限らず、またそれが不変かつ普遍とも限らない。反復しないために対応関係が見出せなければ、科学は手が出ない。だが基本的にそれでよい。同感だ。世の中、算数や理科で分からないこともあるから面白いのだ。いや、もちろん前向きな意味で。2010/05/07
Phycology
4
前半、科学とは何か?オカルトとの差異は何か?再現可能性と客観性、そして公共性を持つところが一番の違いだということ。また学会の成立やピア・レビューやら科学はどうあるべきかなどの命題について述べられている箇所は楽しかったけど、後半失速している感がある。細分化が進みすぎて公共性を失った科学はアカウンタビリティを無くして市民の支持が得られず、一方のオカルトはどんどん拡大再生産されていく。正直なところ、結論部分はとりとめがない感じだった・・。2011/01/25
レコバ
3
論理あるいは著者の発想がどこに向かうのか、先行きが読めないという意味で小説のような内容だと感じた。かつて錬金術が突き当たった袋小路と、それを利用し隆盛を極めた科学。現在、科学の前に立ちはだかる隘路。その虚像としてのオカルトを規定しようというのが本書の試みだが私自身の関心的に虚像ではなく実像の方に興味深さを感じた。2020/06/24