内容説明
みなもとのよしつね――その名はつねに悲劇的な響きで語られる。源氏の棟梁の子に生まれながら、鞍馬山に預けられ、その後、関東奥羽を転々とした暗い少年時代……幾多の輝かしい武功をたて、突如英雄の座に駆け昇りはしたものの兄の頼朝に逐われて非業の最期を迎えてしまう。数奇なその生涯を生々と描き出した傑作長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
155
落語を聴いても、歌舞伎を観ても、源平合戦や頼朝vs義経・弁慶の話は拾いきれずにいつも悔しさが残る。「源平盛衰記」や「平家物語」、「義経記」を読もうにも敷居が高くて、なかなか手に取れぬ。ならばこれからと、取り掛かった。司馬史観が入っているだろうし、彼の創作もあるにせよ、わかりやすい。義経を殺さなかった清盛、清盛の子を生んだ常磐。ほぅ。天下をとった平家がしてきたことを、その後に天下をとったものは真似せぬようにしてきた、か。なるほど。「平家にあらずんば人にあらず」となれば、恨みをかうとなあ。2018/09/16
遥かなる想い
136
義経を少し引いた感じで描いた作品。今では 定説になっているが、私が読んだ当初は、知らなかった頼朝と義経の立ち位置がよくわかり、歴史の面白さを再認識させてくれた作品だった。2010/07/31
明智紫苑
128
アーサー王伝説をテーマにしたブログの記事を書くために「井村アーサー」を読んでいるが、息抜きとして司馬義経を読む。しかし…義経の致命的な政治力のなさはランスロットと変わらん! この二人の同類として「国士無双」韓信という人がいたけど、誰かが「司馬さんが本当に描きたかった韓信のイメージとは、すでに『義経』として描いてしまったのではないのか?」と言っていたのには大いに納得した。この三人、政治力のなさが最大の弱点だが、それがかえって魅力にもなっているのだ。多くの日本人は政治的な人間を苦手とするのではないのか?2016/08/08
優希
93
面白かったです。この時代の物語を読むことは滅多にないので興味深く読みました。義経が過去転々としていたことは知っていましたが、改めて子供時代は暗かったのだと思わされました。上巻ではあまり義経の活躍はありませんが、下巻でどう動くか楽しみにしてます。2018/09/04
金吾
69
○幼少から義仲追討直前まで書かれています。政治的思考が一切ない情感の人として義経がとらえられていますが、下巻から軍事的な部分に触れられていくのが楽しみです。源氏と平氏の氏としての性格の違いは興味深いものがあり、頼朝の徹底した考えを子孫や一族が理解しなかったことが源氏滅亡につながったのかなと感じました。2021/10/26