内容説明
コンピュータ・情報通信技術は今日、社会生活においてなくてはならないものになっています。本書では、20世紀初頭に萌芽を見せ、インターネットの誕生など大きな発展を遂げたコンピュータ・情報通信技術の歴史において、多大な貢献を果たした科学技術計算の父 バネバー・ブッシュをはじめ、15名の科学者たちの伝記を掲載。やがて「標準技術」へと結実することになる、彼らの手探りの努力に触れることで、現代社会が広く享受している恩恵の源流を探ります。
目次
まえがき
■バネバー・ブッシュ
科学技術計算とパイパーメディアの父
船乗りの家系から発明家へ
地形記録装置「プロファイル・トレーサー」の発明
ラジオの交流電源利用を可能にした放電整流管
送電網シミュレータから微分解析機へ
デジタル論理回路の誕生とENIACへの影響
クロード・シャノンとの研究
微分解析機は軍事利用へ
軍事政策委員会議長に就任
情報検索システムの先駆け「Memex」
戦後の研究体制の整備を提言
ブッシュの提言はARPAとNASAの創設へ
ブッシュのビジョンに影響を受けた後進たち
■クロード・シャノン
デジタル情報通信理論のパイオニア
発明家を志して
バネバー・ブッシュの研究助手に
デジタル計算の機械化を可能にする理論0と1の世界、2進数で計算機の回路設計を可能に
暗号解読や遺伝子研究にも才能を発揮
飛行物体の航路を予測する研究に従事
連合軍の勝利に貢献「XT-1自動追跡レーダー」と「M-9予測装置」
大西洋上の通話を暗号化
アラン・チューリングとの協働
“ビット”の誕生デジタル情報の発展を導いた通信の数学理論
サンプリング理論の発展
コンピュータ・チェス・プログラムへの関心
迷路問題を解くネズミのロボット
人工知能の領域でも先駆者に
ネットワーク世界の発展への明確な指針
■ジェイ・フォレスタ
オンライン・リアルタイム処理の創始者
ネブラスカの開拓民の子供
砲塔の自動制御技術を開発
Whirlwindプロジェクトの成り立ち
防空システムの情報処理中枢に
Whirlwindの性能
リンカーン・プロジェクトの発足
3次元構造のコアメモリの発明磁束の変化をメモリに応用
コアメモリが実現したオンラインシステム
SAGE防空システムの離陸
史上空前の巨大コンピュータ「AN/FSQ-7」
WhirlwindからSAGE、そしてインターネットへ
■ウェズリー・クラーク
パーソナル・コンピューティングの先駆者
理論物理学に挫折してプログラマに
最初のトランジスタ・コンピュータ「TX-0」
革命の起点となったTX-2
PCとバイオインフォマティクスの先駆者
ワシントン大学で再出発
非同期コンピュータへの挑戦とARPNETへの貢献
■J. C. R. リックライダー
普遍的なネットワーク社会の実現に踏み出したARPANETの創始者
実験心理学との出会い
音響心理学研究所での研究
ハーバードで脳の研究に着手
国防プロジェクトでライトペンを開発
レーダー基地ネットワークの構築
PDP-1との出会いプログラミングを学ぶ
人とコンピュータの共生現在のWebの世界を予見
ARPAへの入局ミサイル防衛管制システムの開発へ
研究者コミュニティの創設を構想
ダグラス・エンゲルバートからの提案ロバート・ファノとの出会い
「銀河間コンピュータ・ネットワーク」の構想
タイムシェアリング・システムの普及拡大
タイムシェアリングOSの開発
ARPAからIBMへ
「コミュニケーション・デバイスとしてのコンピュータ」
インターネットの起源「ARPANET」の実現
再びARPAへ研究プロジェクトの再編を手がける
MITに戻った晩年
■ジョン・マッカーシー
情報ユーティリティ構想と人工知能の先駆者
フォン・ノイマンとシャノンとの出会い
ダートマス人工知能夏期研究会
LISPの開発
情報ユーティリティ構想
タイムシェアリング・コンピュータの実験
ARPANETと人工知能研究
■アイヴァン・サザランド
スケッチパッド、バーチャル・リアリティ非同期高速コンピュータの開拓者
12歳でプログラミングを体験
人工知能、トランジスタ式コンピュータとの出会い
リンカーン研究所の「TX-2」
図形描画プログラムを着想クロード・シャノンに師事
図形描画プログラムの開発
スケッチパッドの誕生
オブジェクト指向言語の出発点に
コンピュータ・グラフィクスの時代の到来
26歳でARPAの情報処理部長に就任
リックライダーのコミュニティでの交流
2台のコンピュータの接続実験「メッセージ・プロトコル」は標準技術の出発点に
コンピュータ・グラフィクス研究の指針を示しIPTO部長を退きハーバード大学へ
バーチャル・リアリティの研究「ヘッドマウント3次元ディスプレイ」を発表
3次元グラフィクスの先端企業「エバンス&サザランド・コンピュータ」の設立
VLSI時代の到来を予言
サザランド周辺で次々と花開いた成果
VLSI時代の到来
グラフィック・プロセッサ「Geometry Engine」
オブジェクト指向言語「SmallTalk」
ページ記述言語「Interpress」
「サザランド、スプロウル&アソシエイツ」を設立
非同期回路の研究へ
A. M. チューリング賞を受賞
サン・マイクロシステムズ・ラボラトリーズの設立
情報ハイウェイ構想技術諮問委員会の共同議長に就任、さらなる研究へ
次世代スーパー・コンピュータを目指して「Hero」プロジェクト
非同期論理回路が実現の鍵
■フェルナンド・J・コルバト
タイムシェアリングOSの開拓者
物理学博士号を得てコンピュータ科学者に
タイムシェアリング・システムの提案
最初のタイムシェアリングOSのCTSS
プロジェクトMACとオンライン開発環境
Multic――コンピューティングの新潮流に挑戦
SMPとパーティションやセキュリティ機構の実現
Multicsとインターネット
■ジョン・G・ケメニー
DTSSとBASICでオンライン教育を普及させた先駆者
天才科学者に薫陶を受けた半生
ダートマス大学の計算機科学事始め
タイムシェアリングの検討
BASICの開発
DTSSの始動
広域タイムシェアリング・サービスの先駆者
■ポール・バラン
自律的パケット・ルーティングの確立
UNIVACとミサイル開発を経験
ランドで国防通信網の研究者に
分散型通信ネットワークのアイデア
ルーティング・テーブルとアルゴリズムを開発
国防通信網の挫折
インターネットへのバランの貢献
シリコンバレーの起業家に
■ドナルド・ワッツ・デービス
「パケット」という言葉の考案者
物理学者として原爆の戦時研究に従事
チューリングとの出会い
ACE開発プロジェクト
タイムシェアリングからパケット通信を着想
全英パケット交換網の提案
ARPANETに影響を与えたパケット通信の理論
構内パケット・ネットワーク
晩年のデービス
■ローレンス・ロバーツ
ARPANETを現実に導いたアーキテクト
3次元グラフィクスの先駆者
グラフィクスとネットワークの狭間で
最初のWANの接続実験と標準技術の萌芽
ARPANETを現実に導いたIMPとNCP
電子メールのコミュニティを形成
ネットワーク革命の一翼を担い続ける挑戦者
■フランク・ハート
ルータの起源となったIMP開発のリーダー
MITでコンピュータに出会い、リアルタイム処理の先駆者に
BBNで医療機関向けコンピュータ事業を担当
ARPANETとネットワーク専用コンピュータ
プロジェクトチームの編成
IMPの受注
IMPの開発
IMPの0号機
最初の4ノード
遠隔診断とソフトウェア配布の実現
TIPの開発とARPANETの拡大
■レオナード・クラインロック
ARPANET構想を現実に導いたパケット交換理論の提唱者
ラジオ少年からMIT大学院に
待ち行列理論の研究
コンピュータ網でメッセージの測定を可能にする法則
ARPANET構想と蓄積交換型ネットワーク
ARPANETの最初のノード
ネットワーク測定センターとNWGの発足
UCLAの大学院生の活躍
ARPANETの離陸
情報ハイウェイとノマディック・コンピューティング
■ダグラス・C・エンゲルバート
ハイパーメディア・オンライン・コミュニティによる知的能力増強を目指した移植の技術者
Memexとの出会い
コンピュータ技術者に
リックライダーとサザランドの影響
人間の知的能力の増強
マウスの発明
NLSとタイムシェアリング・システム
伝説のプレゼンテーション
ARPANETの接続実験
NLSの凋落
ブートストラップ・インスティチュート
著者紹介