内容説明
香淳皇后の実家として知られる久邇宮家。初代は明治天皇を手こずらせ、2代目は貞明皇后を激怒させ、3代目は婚約破棄事件を引き起こす。戦後、皇籍離脱したお騒がせ皇族の実態に迫る皇室ノンフィクション。
目次
序章 貞明皇后の怒り
第1章 皇太子妃「内定」
第2章 騒動の始まり
第3章 杉浦重剛と日本中学校グループ
第4章 邦彦王の反撃
第5章 政治と怪文書
第6章 後日談
第7章 朝融王事件
第8章 朝彦親王と久迩宮家
第9章 邦彦王の時代
終章 貞明皇后の言葉
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
崩紫サロメ
13
明治期に新設された久邇宮家の変遷を通して、近代日本における皇族を考えるもの。通常、山県有朋が悪役として語られる「宮中某重大事件」(後の貞明皇后と皇太子の婚約破棄未遂事件)を、立憲君主制の枠を超えた振る舞いを見せる久邇宮に対する山県らの牽制と捉え直している。膨大な史料に基づいた大著で、時系列的に初代となる朝彦親王の時代が最後に来ているなど、小田部雄次『天皇と宮家』を﨑に読んでおいたおかげで分かりやすいところが多く合った。2020/06/30
波 環
5
先日、明治天皇のお血筋の男性が薬物で御用になった事件があったり、そのお従兄弟氏は近年、女性との活発なご交際で報道されたりしたけれど、数が増えれば個性的な人が出てくるのは当然。皇族の存在価値については、徳川期、明治期〜戦前、戦後とどんどん変わり、時代の要請で変化している。われわれもあらまほしい皇族像をもつことは自然だろう。貞明皇后の大人物ぶりはやりひぬきんでていて、かわりものの父宮としっかりもので健康的な良宮はべつのものと判断して皇太子妃として迎えることに躊躇しなかったことは特筆。2015/09/22
Solanum tuberosum
3
宮中の騒動と聞いて想像するのは、平安時代の貴族や中国の宦官らであり、歴史上の話題であると思っていた。現代では宮中という概念自体が過去の遺物と信じており、明治維新から昭和初期に至るまで政治家を巻き込んだ事件があるとは露とも想像していなかった。いつの時代も表層を変えつつも、本質の変わらない問題が存在することを知ることができた。2015/08/01
Ikuto Nagura
3
明治憲法制定から敗戦までが約55年、日本国憲法制定から現在までが約70年。象徴天皇制は、今の天皇の努力もあり上手く機能しているようにみえる。でも本書のような野心的な皇族や、それに群がる輩を見ると、近代の天皇制は、天皇自身の民主主義を守る強い意識と、その権力とその悪用を牽制できる力を持った政治家がいなければ機能しえない仕組みなのだと気付く。現代でも不穏な輩が動き回る気配がするし…。そして、坂口安吾が『続堕落論』で主張するように、我々の無責任の尻拭いとして利用するだけの天皇制なら、無くしてしまえばいいのに。2014/11/09
ふたば
2
タイトルに偽り在り。。。だろうか。宮中某重大事件については、今までにも書き記したものを読んだことはあるが、このように見ることもできるのか、と思う。この件については、裕仁親王が「良宮が良い」といったという内容を読んだことがあるが、この著作を読む限り、裕仁親王はそう言っていない。むしろ、久邇宮家に対して思うところがあったようにも感じるし、良子女王について、特に心を砕いていたようにも感じない。久邇宮家の思うところについては、何が起きて、何が行われたのかを実際に眼前にしないとわからないのかもしれない。2021/05/09