内容説明
疑心暗鬼が七人の友情を切り裂いてゆく。
――空は、墓場だ。
――わたしは人間ではない。戦闘機の一部だ。
かつて「空の王」と呼ばれた父、カルステン・クライシュミットの教え。
その言葉を胸に刻み、一個の鉄塊となったイリアは、今日も灰色の空へ向かい離陸する。
25戦中、24勝1敗。撃墜数33機――。
エアハント士官学校飛空科の「模擬空戦」において、驚異の記録を更新中のイリア・クライシュミットは、「空の一族」の追撃からただ一機帰還し、叙勲までされた士官候補生たち「エリアドールの七人」の中では突出した存在となっていた。
比して、イリアと共にエリアドール飛空艇の操縦を担当した坂上清顕(さかがみ・きよあき)の戦績は、11戦して2勝0敗9引き分け。撃墜数0機。
互いに撃墜王の父を持ちながらも、イリアに実力の差ばかり見せつけられ、悩み、焦る清顕。
――なんのために、ぼくは戦場を飛ぶ?
――なんのために、ぼくはひとを殺す……?
そして、平穏な学園生活の中で懊悩する裏切り者の工作員「ハチドリ」。その正体も明らかに――!?
七人の主人公が織りなす、恋と空戦の物語。激動。
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まりも
62
7人の少年少女による恋と空戦の青春物語の2冊目。いやー、今回はやられちゃいました。だいたい予想通りでしたが、それを切り出すタイミングが非常に上手いですね。7人の友情が深まっていく過程や清顕の成長、メルヘンドーナッツ事件の後に明かされるだけにダメージ倍増でした。特にラストのイラストは本当にツラい… 日常が穏やかだけにその裏側がより際立つ展開だったと思います。これから先どうなるのか、次巻も楽しみ。2015/05/05
よっち
61
士官学校に進学しイリアを筆頭に、他の七人がめきめきと頭角を現していく中一人伸び悩む清顕。それでも父親たちのライバル関係が、不器用な二人の思いとは無関係に対決を期待させてしまう中、的確なアドバイスで問題点を指摘するイリアは清顕のことをよく見ていますね。誰のために戦うのか、自分の想いを自覚した清顕は力を発揮できるようになったものの、全力の戦いの中で急速にその距離を縮めていく存在がいる一方で、密かに明かされる王位継承者。裏切り者たち二人の邂逅。ちょっとこれはキツイ展開ですね。悲劇が起こらならないといいんですが。2014/12/05
いーたん
44
とにかく結末とその過程が気になって仕方ない!と思える飛空士シリーズが大好きです。2013/02/27
星野流人
39
エアハント士官学校のメンバーたちによる模擬空戦がメイン。生徒同士の模擬空戦であるため、他シリーズの息詰まる命懸けの駆け引きには一歩及ばないものの、しかし清顕とイリアの対決は、やはり熱くておもしろかった。 そして今巻では、1巻でもキーパーソンとして描かれていたシルヴァニア王家王位継承者と、ハチドリ、あとついでにメルヘンドーナツの製作者の正体が明かされる。この謎の人物たちは一体誰なんだと、少ない情報の中からミスリードの可能性も考慮しつつ推測してみた。2013/02/21
さばかん
28
この巻を朝の電車内で読み終えてしまい、日中ずっとミオのことを考えていた。 清顕は無邪気な少年でいられなくなってしまったけど、無邪気だったころの面影は残っていて、だから……清顕はずっと清顕のままでいてほしいなって。 この世界は残酷だ。 それでも空は美しい。 2015/10/21