内容説明
自らをイエスの乗り物、小さいロバに擬し、生涯を伝道に捧げた榎本康郎牧師の壮絶な生と死を綴った伝記小説。
「イエスを乗せて世界の涯までも歩む小さなロバでありたい」との決意のもと、日曜学校や保育園を設立し、妻・和子とともに、貧しい生活の中で伝道活動に身も心も捧げていく榎本保郎。京都から今治に移ったのち、アシュラム運動の発展にも尽力するが、その体は確実に病に蝕まれていった・・・。
虚飾のない、血のかよった人間味溢れる「ちいろば先生」こと榎本保郎牧師の姿を描く、伝記小説。
「三浦綾子電子全集」付録として、夫・三浦光世氏による「創作秘話」を収録!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
kawa
31
「ちいろば」とは主(キリスト?)に必要と言われれば、たとえその力がない小さなロバでも、素直にその用につくロバを称するらしい。主人公の榎本保朗牧師の生涯は、その教えを見事に貫徹。体調の悪化で周りの人々が止めたにも拘らず布教の旅路で逝ってしまった。若い頃、親しくしていただいた仏教者に「自己限定をせず、頼まれた仕事は断るな」とアドバイスをいただき、随分と違う景色を見れた記憶がある。榎本師の姿勢はレベル差は各段だがそれに近い教えもしれない。宗教とは何か、その視点の入門書として最適ベストな一冊だと思う。2023/07/24
ほうき星
15
再読本。といっても遥か昔の事だ。榎本保郎牧師の52年その激動の生涯を綴った作品である。信じるままに。容易いことではない。強い意志がなければできない。熱く篤く人生を駆け抜けた。私の人生はどうだろう、大丈夫か。悔いなく生きたいと思った。2016/10/05
Ayakankoku
12
小さな頃通っていた教会の子ども用の礼拝の名前が「ちいろば教室」だったので、ずっと気になっていた「ちいろば先生物語」。神様を信じて、歩む榎本牧師。どんなことも信仰があればなんとかなると歩む力強さに感服。そして牧師夫人として夫を支え続ける奥さん、素晴らしいなの一言に尽きる。2022/01/15
あかつや
7
何も持たない学生の身でありながら世光教会を立ち上げた保郎。神さまがなんとかしてくださるだろうの精神で困難を乗り越えていく。結局最後まで読んでもこの人のこと好きにはなれなかったなあ。こいつ嫌いだわって場面がたくさんあった。でも周囲の人達の反応を見るに、実際に接したらたらしこまれるんだろうなあ。きっとこの人は伝道特化型人間だったんだろう。上巻に出てきた高崎倫常さん流に言うなら、伝道という本来の使命を徹底的に果たした人物ってことになるか。伝道のために自分が育てた教会を去っていく所なんかは偉いなあって思ったよ。2022/07/27
ほん(ぷちわら)
6
伝記なのに小説のように面白い!解説者は作者について「実在の人物の生涯を物語の形で描く手法のあざやかさという点で、この作家の力量は非凡である。」といっているけど全く同感。また他の作品も含めた三浦綾子の伝記作品についても『そこに描き出された一キリスト者の人間像が、信仰の有無にかかわらず、「よりよく生きたい」とねがう多くの人たちの願望を吸い上げる媒体になっている』といっている。私もこの作品について全く同じ感想を持った。解説も含めてとても読み応えがあった。「文学」に触れた感じ(゜-゜)笑2013/09/19
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