内容説明
東京の大学を中退して行方知れずになっていた長男が、女を連れて戻ってきた。彼女とは、四日前に結婚したという。養蜂一筋に生きてきた伊八郎の心は、喜びと憤りで大きく揺れた。四月、春の訪れと共に、一家は花を追って、日本列島を北上するトラックの旅に出るが……。旅先で遭遇する事件や人間なるがゆえの葛藤を、雄大精妙な自然界の摂理を背景に捉えた力編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
111
鹿屋の養蜂家一家。環境の変化により、徐々に今までの養蜂業に暗雲が立ち込める。祖父の代から養蜂を続ける一家は、花の蜜を求めて、巣箱を伴い日本を北上する。知られざる養蜂業。昭和40年代後半の養蜂家の様子がよく分かる。大切な生きる糧である蜜蜂達と共に花の蜜を求め旅する。長野、秋田、北海道。途中で蜜蜂が死滅してしまう危険もある。自然や環境が相手の大変な稼業だと思う。後継ぎの長男の未熟さへの不安。素性の知れなかった長男の嫁の芯の強さ。蒸発した同業者との偶然の再会。ラストに希望があり読後が暖かい。充実した作品です。2022/04/10
Aya Murakami
95
図書館本。 ニホンミツバチ…。朝鮮半島からもたらされ野に放された…のかなぁ?昭和62年に出た本なので少々情報が古い箇所があるような気がしますが、移動養蜂とは過酷なロードムービー…。ロードムービーであると同時にミツバチと人間の家族物語でもある本作でした。そしてヨソモノがミツバチを連れて旅するわけですからハチが嫌いな人やライバルであるその土地在住の養蜂家からは嫌な目で見られますね。巣箱に殺虫剤はひどすぎる話ですが。ミツバチは益虫だから増やしまくってOKというわけにもいかない養蜂の厳しさ。2024/07/15
kinkin
90
九州に住む養蜂家の物語。日本を南から北へ蜂とともに縦断する家族。旅の途中で起きる様々な出来事や人との出会いが描かれている。養蜂の仕事は季節まかせでのんびりと日本中を旅しながら出来て憧れがある仕事だったがこの小説を読むとその大変さがよくわかった。養蜂で使う用語も綿密に取材、解説されているところが吉村昭氏らしい。いつもながら静かな語り口が好きだ。採取した蜂蜜を缶に入れて貨車で送るという描写があり調べてみるとやはり昭和48年頃に書かれたものだった。当時は貨物といえば国鉄の貨物が一般的だったことを思い出した。 2016/03/01
大阪魂
59
面白かった!養蜂事業者さんの記録小説!鹿児島の鹿屋で養蜂してる伊八郎さんとその家族が主人公!冬を巣の中で越した蜜蜂に春は鹿屋の菜の花で蜜を集めてもらい、菜の花がなくなったらトラックで巣箱を運びながら花を追って東北、そして北海道まで!蜜蜂はとにかく暑くなると荒れて死んでしまう「蒸殺」事故がよくあるみたいでトラック運搬でも渋滞避けるとかほんま苦労されてる姿がビシビシ…北海道いくのも蜜集めゆーより避暑の意味が大きいみたい!家族の悩みも混ぜながら鹿屋に戻る11月までの蜜蜂の生態と事業者さんの苦労話、勉強なったわー2024/04/20
mondo
58
蜜峰乱舞は、吉村昭の小説の中で唯一単行本として出版されなかったものと紹介されていた。鹿児島の養蜂家が日本列島を縦断しながら、自然の摂理や家族愛を物語るドラマに仕立てられている。これまで知ることのなかった養蜂の生活や蜂の生態は興味深く、スリリングなものであり、北海道の生活では羆と向き合うシーンも登場し、一瞬「熊嵐」を想像させるところもあり、ドキリとさせる。一方で、息子の嫁の兄が轢き逃げ犯として、登場するシーンでは、「見えない橋」を思い出させる人間ドラマも展開する。展開の早さもあり、読み応えのある一冊。2022/08/02
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