内容説明
反権力とキリスト教など、著者の歴史観、人間観、信仰観をより深めた作品といわれる歴史ロマン大長編。
キリスト教に帰依したおりき(のちの宗恩)とやっと夫婦になった利休(宗易)だったが、権力を握った秀吉にとって茶の湯は使命を終えたものでしかなかった。無形の自由、精神の自立、心の昇華を追求する利休の運命は・・・。そして、それを支えるおりきは・・・。著者の歴史観、人間観、信仰観をより深めた作品といわれる歴史ロマン大長編。
「三浦綾子電子全集」付録として、著者がアマチュア将棋誌『将棋ジャーナル』に寄稿したエッセイ、伊豆大島にて静養中の写真を収録!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カレイ.シュウ
65
下巻は秀吉に重用され、茶人のみならず、政治家としても映画を極める利休だが、権力争いのなかでついに切腹させられる。利休自体は金も色も名誉も欲しがる俗物だが、茶道という宗教に邁進するが、それもキリシタン程すべてを捨てられず悩む。しかし最後は権力に屈せず、茶道の殉教者として死を選ぶ。利休の人生を借りた宗教小説ですね。2019/10/29
優希
64
利休とおりきは夫婦の契りを交わします。キリシタンとなったおりきを守ることと天下の武将に仕えること、そして茶人としての悩み。それでも茶の道に命をかける利休の強さを見たような気がします。おりきの支えもあったからでしょうね。キリスト教と茶道の絡み方も興味深かったです。2021/04/26
優希
49
利休とおりきは夫婦の契りを交わします。キリシタンとなったおりきを支えることや、茶人としての悩みがありつつも、茶の道に命をかけたのは利休の決意だったのでしょうね。それでも権力争いに巻き込まれていくのは時代あってのことでしょう。武力が全ての戦国の世で茶の湯に人生をかけた利休と、無性の愛で支えたおりきの姿が美しかったです。2023/12/14
ach¡
30
壮絶な最後に言葉を失う。利休に肩入れしすぎて読後が辛い。が勝者によって作られる歴史の理不尽を誹るが如く、高名な糞どもを(…失礼。憤懣冷めやらぬ)筆ひとつにて遣り込める快さは三浦作品ならでは!女性目線ゆえの共感も多い。好き嫌いが分かれる綾子テイストも、私には好ましくて有難い。ただ毎回三浦作品で自身の愚かさ未熟さを思い知らされ改心するのに、恐ろしいほど成長していない私の現状コレどゆこと?あと…ガラシャといい、おりきといい、やっぱり女は顔かっ!!誰か醜女にも花を(泣)って不憫な義憤はどーしたらいいのでしょうか?2015/06/09
りー
28
タイトルの「妻たち」はどこへ行ったのか?と思うくらい、利休と最愛の妻おりきの美しい愛の物語になっていて、これで良かったのかな?と疑問が残ります…当時の価値観と現代が違うことを踏まえて読まなければ。茶道は全く嗜みがないので分かりませんが、キリシタンの聖餐の儀式の所作と茶道の所作には共通点があるという説は初めて知り、興味深く読みました。商人として、茶道頭として、父として夫として様々な顔を持ち、いずれも超一流であった利休。貪欲に学び続け教え続ける凄まじいエネルギーを感じました。孔子にイメージが重なります。2021/10/16