内容説明
人間の本質に迫る三浦文学の最高傑作!
昭和元年、北森竜太は、北海道旭川の小学4年生。父親が病気のため納豆売りをする転校生中原芳子に対する担任坂部先生の温かい言葉に心打たれ、竜太は、教師になることを決意する。竜太の家は祖父の代からの質屋。日中戦争が始まった昭和12年、竜太は望んで炭鉱の町の小学校へ赴任する。生徒をいつくしみ、芳子との幸せな愛をはぐくみながら理想に燃える二人の背後に、無気味な足音……それは過酷な運命の序曲だった。
「第1回井原西鶴賞」受賞作品。三浦綾子、生前最後の小説。
1996年(平成8年)、NHKで「銃口 竜太の青春」としてテレビドラマ化され、作品が第14回ATP賞‘97奨励賞を受賞した。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
298
素晴らしい先生に出会った!僕もいつか必ずそんな先生になる!心の澄んだ様々な人と出会い、僕も誰かにいい影響を与えられる人になるんだ!美しい話です。しかし時代が悪かった。上巻は北海道に生まれた主人公竜太が、学生時代に出逢った友人や先生と触れ合う中で、教職という道を選び生徒と共に成長していくという設定。時代は昭和初期、日毎迫る戦争への突入気運、治安維持法を代表する言論や思想の統制プロセスの歪みがとても良くわかる。思うことを自由に発言できない理不尽。正論のいかに弱きことか!巻末の驚きが下巻への即突入を促す‼️🙇2020/08/18
おしゃべりメガネ
137
500頁弱の大作も全く苦にならず、頁を捲る手も止まらず、イッキに読了です。時は昭和元年頃からスタートし、小学四年の「竜太」はそこで転校生「芳子」と出会います。同じく担任の「坂部」にも出会い、彼らとの出会いがのちの「竜太」の人生に大きな影響を与えていきます。時は流れ、無事教師となり、とある炭鉱の町に赴任しましたが、そこでの人との出会いも彼をまた更に成長させてくれます。「芳子」との仲も順調でこれから更に幸せが待ち受けていると思っていた矢先に、理由もわからぬ事件に巻き込まれます。下巻が気になりすぎる終わりです。2021/06/10
遥かなる想い
83
三浦綾子が描く「戦争」により人生を狂わされる人々の物語。主人公の竜太は先生を目指し、芳子との愛を育むのだが、日中戦争により・・という話だが、毒がなく純粋な愛の物語。竜太の生き方がすがすがしく心が洗われる思いがする。読んでいて希望の光のようなものが感じられる本である。
piro
43
小学校の恩師・坂部先生に憧れて教師を志した北森竜太は、日中戦争が始まった昭和12年、炭鉱町の小学校に赴任します。坂部先生の様に生徒を愛し、未熟ながらも大志を抱いて教職に奉ずる姿は初々しくて微笑ましい。しかしながら徐々に戦時下の闇が不気味な足音で忍び寄り、物資の欠乏だけでなく、言論や集会・教育の統制という形で人々を縛っていきます。その様が何とも言えず不快で恐ろしい。真っ当な発言や行動であっても、それが元である日突然処罰・報復される世の中。かつて我が国が経て来た闇の歴史を強く感じつつ下巻へ。2020/12/20
Die-Go
41
実家にあった本。感想は下巻でまとめて。★★★★☆2015/08/22