内容説明
降りしきる雪、音の消えた世界。ぼくたちの教室から見えるのは、ただ白――どこまでも続く白色のつらなりだった。新たな氷河期によって、世界が冬に閉じこめられた時代。そこに彼女はいた。嶝崎人魚、ぼくのクラスメート。彼女は言った、「夏が見たい」と。すこしずつ過去を語りはじめた人魚、その左胸には文字のような傷が痛々しく残っていた。それはかつて彼女を誘拐した、連続少女殺人犯・大江公彦の手による刻印だった……。死が普遍となった街で、ささやきのように語られる、冷たく静かな物語。※巻末ページのリンク先にはジャンプ出来ませんのでご了承下さい。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
拓也 ◆mOrYeBoQbw
12
ディストピアSF中篇。「東京ミカエル」番外編、静謐な文体と世界から隔絶された雰囲気が漂う作品です。本編である「東京ミカエル」が”動”ならこちらは明らかに”静”。絶望の果ては優しさと許容、短いながらもその点はうまく表現されてますね。2015/08/30
いおむ
6
再読ー!タイトル&表紙買い。当時鶴田さんの絵はみんな買ってたな(笑)作品の雰囲気は好物。2018/01/04
読み人知らず
4
とにかく大江公彦とか、いつもの名前が出てきてしまう。話自体は冬に閉ざされた物語で、あとがきにあるように絵から書かれた物語のようにおもう。確かにすばらしい絵です2015/06/15
もったか
4
なんでかよくわからんが何っ回も読んでまう一冊
カール
3
悲惨な世界観と無機質な舞台の中で必死に足掻いた2人の高校生の物語。あの世界観とあの暗い結末を知ると、『冬の教室』というタイトルも中々言い得て妙だと納得できてしまうはず。裏話が色々聞けるあとがきのハイテンションと本編のギャップがすごい。元々他の企画で作られていたシナリオの流用とはいえ、3日間でこれ程印象的な小説が作られたと思うと、中々衝撃的。本の厚さこそ160ページそこらしか無い事もあって薄いのだけど、救いの無い絶望感と灰色な世界観。知的な登場人物達の無機質な生活と、中々味わえない個性に満ちた本だ。2017/03/09