出版社内容情報
情熱につかれた人間同士の,――幾組もの人間と人間との悽惨な格闘がバルザック一流の力強い筆で描かれている.好色漢ユロ,貞淑そのものの男爵夫人,ブルジョワの典型クルヴェル.骨の髄までの娼婦ヴァレリー,復讐の鬼ベット,こうした人物を駆使する点でバルザックの右に出る者はない.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
35
ユロ男爵一家に対するベットの復讐譚は、あわやというところで思いがけない展開を見せる。自分の所業ゆえに死ぬ者、死を直前に悔悛する者を目の当たりに見てさえ、なんら反省の色も見せない者の厚顔無恥ぶりは、コメディ以外の何ものでもない。貞淑なのに夫に虐げられ続けたユロ男爵夫人が最後まで報われないのは残酷にも見えるが、ベットと正反対であり続けたために、彼女はベットの毒牙を受けずに済んだのだといえる。私としては、ユロ夫人を憎悪し続けることが生きがいだったベットが、憎悪の対象を失ってどう生きていくのか気になるところだ。2016/01/06
Mana
5
上巻では向かうところ敵なしといった感じだったベット嬢&マルネフ夫人のコンビも、話が進むにつれてだんだん手綱をとれなくなり、話は思わぬ方向へ。途中結構ハラハラしたけど、後半は若干力不足かも。悪女入門でマルネフ夫人はスタインボックの誘惑に失敗したことで彼の事を好きになってしまい、その恋が命取りでって感じに書いてあったけど、読んでる限りじゃ誘惑にはしっかり成功しているんじゃ?致命傷も別に彼は関係ないような?? 鹿島茂さんは信頼してるから、間違えてるとも思いにくいけど…2018/05/16