内容説明
稀代のペテン師・佐村河内守の虚飾の真相! 18年間、ゴーストライターを務めた新垣隆の懺悔告白によって暴かれた、何重にも嘘に塗り固められた佐村河内守の虚飾の姿。二人の共犯関係はなぜ成立し、誰もが騙され続けたのか――。テレビ、新聞、出版、音楽業界……。あらゆるメディアを巻き込んで繰り広げられた壮大なペテンの真相に迫った渾身のノンフィクション。週刊文春が告発した佐村河内守のゴーストライター事件の全貌。第45回大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おいしゃん
85
【大宅壮一賞作品】この作品が、強く心を揺さぶる理由は二つある。一つは、まさにこの問題を世に明かした張本人の作品であること。そして、両者の生い立ちや犯した内容を克明に記し、「完全悪」にまつりあげようとしているわけではない点だ。少しの才能と有り余る自己顕示欲の塊である佐村河内、大きな才能を持ちながら欲を持たない新垣。特徴的すぎる二人だが、実はその根底に流れる意識、つまり「認められたい」という意識は少なからず誰しも持つ。誰の心にも宿る「佐村河内」とどう向き合うか。久々に心揺さぶるノンフィクションだった。2015/05/31
kinkin
69
タイトルはイイと思う。このインチキ男に振り回されたマスコミはどう彼と対応してきたのか、その辺りも明確に取材してみてもいいかなと感じた。こんなインチキになぜ、本当に確認や検証がされなかったのか、実は知っていてそのまま突っ走Lてしまったことはなかったのか、どうもひっかかった。どんな世界にもゴーストといわれる人はいるそうで、絵画や写真などとともに芸術という分野では経過よりも結果の世界、こういうことは知らないうちに自分自身もどこかで受け入れられていると思う。自分のフィルターを持つことの大切を知った。2015/01/11
harass
65
「全聾」「被爆二世」「障害児」「震災」といった属性を利用していく佐村河内と彼の実際の作曲をしていた新垣に奇縁ともいえる出会いをする著者は、彼らの真実と嘘を暴いていく。自分はTVを見ないので謝罪会見で初めてこの偽音楽家のことを知った。最近思い出して本を借りてみた。セルフ・プロデュースと売れる戦略に長けたペテン師とお人好しだが音楽に詳しい天才が実に対照的だ。見世物でもある芸術、この場合はクラシック音楽であるが、音楽そのものに差異が見いだせないなら、こういう売り方になってしまうのは必然。文学も同じ。2016/09/22
starbro
58
ニュースで見ていた時は良く理解できませんでしたが、本書を読んで本事件がはっきりと理解できました。今回は氷山の一角で人類の文化史の中で数多のゴーストライターが存在して来たんだと思います。因みにTDLのホーンテッドマンションにはゴーストライターの亡霊が999人分いる設定になっています。秋元康にはかなりのゴーストライターがいると確信していますが、誰か暴露してくれないでしょうか?2015/01/21
mazda
46
佐村河内という人は、本当に腐りきった人間だということが分かりました。全てが嘘で塗り固められた人生を送ってきている上に、「障害」を美談に仕立てて自分の株を上げると言う、人として最も恥ずべき行為をしていることに対して怒りを覚えます。何よりも心配なのは、思春期をこんなやつの指導のもとすごしたみっくんが、将来を悲観したり大人は嘘つきだと盲信して悲観したりしないかな、ということかな…?佐村河内を反面教師に、素直で正しい大人になってほしいと思います。2015/09/13