岩波新書<br> 〈運ぶヒト〉の人類学

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岩波新書
〈運ぶヒト〉の人類学

  • 著者名:川田順造
  • 価格 ¥792(本体¥720)
  • 岩波書店(2014/12発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004315025

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内容説明

アフリカで生まれ,二足歩行を始めた人類は,空いた手で荷物を運び,世界にちらばっていった.この〈運ぶ〉という能力こそが,ヒトをヒトたらしめたのではないか?アフリカ,ヨーロッパ,東アジアの三つの地点を比較対照し,〈運ぶ〉文化の展開と身体との関係を探る.人類学に新たな光を当てる冒険の書.

目次

目  次

 1 なぜ、「運ぶヒト」か?
  ヒトはアフリカで生まれ、世界にひろがった
  アフリカを出たとき、どうやってものを運んだのだろう?
  直立二足歩行が、「運ぶ」ことを可能にした
  直立二足歩行のはじまりは?
  頭蓋骨から推定できる二足歩行
  だが、そもそもヒトのはじまりは?
  これもヒトだけの特徴「二重分節言語」
  では、ホモ・ポルターンスを研究する方法は?

 2 文化の三角測量
  文化を比較する二つの方法
  轆轤を逆にまわす
  日本での琵琶の普及
  風が吹けば桶屋が儲かる
   「はたらく」よろこび? それとも経済外的強制?
  労働をねぎらい、励ます言葉が豊かなモシ社会
  自己主張のつよさ
  市で活き活きとするヨメたち
  地縁組織の弱さ
  人間と道具の関係で比較すると
  アフリカ式溶鉱炉
  夏雨型農耕と冬雨型農耕
  前屈したままでの除草の方がラク?
  冬雨型のフランスではアザミ除去に一苦労
  文化の比較から、「身体技法」の比較へ

 3 「身体技法」としての運び方
  身体と文化
  身体技法の集合としての「おこない」
  モノとのかかわりでの身体技法
   「運ぶ文化」にとっての生態学と働態学
  二重分節言語の条件
  運ぶ行為における、身体と道具
  西アフリカ黒人の身体特徴
  育児法などとの関連
  運搬法にみる三つの指向性
  前頭帯運搬の系譜は
  黒人、白人、黄人にみる運搬具の共通点と差違

 4 「技術文化」と運搬法
  技術文化の指向性
  ヒトと道具──三つのモデル
  道具をまたがない日本の職人
  前頭帯と棒運搬をめぐる文化
  石器文化の西と東、竹の文化は?
   「朸」が提起する問題
  棒でかつぐ運搬の日本での異常な発達
  中国でも多様だった棒運搬
  三文化における「履き物」
  背負い運搬における重心の高低
  人力以外の動力活用への指向
  日本の川船輸送との比較で
  蒸気機関以後

 5 「運ぶヒト」のゆくえ
  はじめどうやってモノを運んだか、再び
  頭上運搬の移り変わり
  より効率のよい運び方へ
  現代日本における身体技法
   「ナンバ歩き」
   「グローバル化」とは?
  グローバル化のはじまり
  進歩をめぐる楽観から、先の見えない悲観へ
  エスニックとグローバルのあいだ
  モノ運びの仮想パレード
  メキシコの少年らのグループ
  フランスのグループ
  いま、アフリカでは
   「運ぶヒト」の原点に帰って
   参考文献
   図版出典一覧

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

壱萬参仟縁

26
写真図解多数にして文字大きめ。高校世界史副読本にも重宝。ヒトはアフリカで生まれ、世界にひろがった(2頁)。猿人骨は9頁の地図では東3国、チャドに南アで発掘。現代では、エボラ出血熱が世界に拡散。運ぶヒトをしてホモ・ポルターンスと称する(7頁)。‘36年モースが身体技法を提唱。運搬、道具、住居の技術面の研究は手薄(54頁~)。 ’27年ボアズは北米北西部のトーテム・ポール政策で細部が一様なのは、彫刻者の運動習慣に保証されていると解明(56頁)。身体技法は地域による異なるヒトの身体特徴。2014/12/20

kuukazoo

12
頭上運搬つながりで。二足歩行を始めたヒトは手だけでなく体の他の部分も使ってものを運び、生活圏を拡大してきた。どんな運び方をするかは体型や土地によって様々だけど、共通点もある。前頭帯というおでこに帯をひっかけて運ぶやり方はアイヌや南西諸島、雲南少数民族、中南米で多い。天秤棒運搬はアジアではメジャーだけど他の地域ではあまり見られない。全体的に系統的というより話があちこちに飛んでちょっととりとめない感もあるけどたくさんの運ぶヒトの姿が見れて楽しかった。2024/04/15

Uzundk

9
ヒトと動物の違いは何か、著者は物を「運ぶ」能力だという。この運ぶと言うことから身体と物との関係が深まった。著者は身体と物の関係を3つのモデルで分ける。A.道具の脱人間化 = 誰が扱っても同じような結果が出る、あるいは人力を省く方向。B.道具の人間化 = 単純な道具を人間の体のように使いこなすこと。C.人間の道具化 = 人間の体の特徴を生かして道具的に扱うこと。今の私達の身の回りのほぼ全ては何かの道具だ、その形式や作法は身体をどう扱うかという文化を背景にしているというのは言われるまで意識をしていなかった2016/07/26

Sugi Takahiro

9
人類の起源であるアフリカでは頭にものを乗せて、子供を背に抱えて長距離を移動する。アフリカ系は骨盤が前傾していること、四肢が長いことからものを頭に載せたり前屈して農作業するのに適している。 西洋人は重心を高めにして、籠を腕に下げたりおなかの前に張って運搬する。文化的にも腕の伸長(ボクシングやフェンシング)とハイハイを是としない風潮があった。 東洋人は骨盤が後傾し、蹲踞や正座が寛ぐ姿勢となり、シンプルな道具でバランスを支えるのが得意。 人種ごとの体の特徴からものの運び方、引いては身体技法まで考察した良本。2016/03/17

紅りんご

6
記念すべき、私の初人類学の本!なるほど。こうやって比較していくのか。やはり方向性はあってると感じた。もう少し突き詰めたい。アフリカ、興味あるなあ。2016/01/27

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