内容説明
世界的免疫学者である著者が、初の留学で住んだ1960年代のデンバー。下宿先の老夫婦との交流、ダウンタウンのバーに通って知った豊かなだけではない米国の現実。戦争花嫁だったチエコとの出会いと30年に及ぶ親交。懐かしくもほろ苦い若き日々――。回想の魔術が、青春の黄金の時を思い出させる。そして脳梗塞となって、その重い病との闘いのなかから生まれる珠玉の言葉。自伝的エッセイ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ジュースの素
11
免疫学で世界に知られた存在の学者。少し前に養老氏の対談本でこの人を知った。お能が趣味で対談では盛んに能の話が出て来た。若い時、米のデンバーに渡り、その時の経験を鮮やかに書いている。英語が苦手だったが下宿先の奥さんに習ったり、近所のバーに出入りして貧しい人々とも親しくなっていく。日本に帰っても何かと彼らの事を気遣い、手紙のやり取りは続く。後年、脳梗塞などで不自由な体になっても執筆や研鑽を積んだ。お勧めしたい素晴らしい本だ。2018/10/13
ウィズ
11
多田富雄先生のご冥福を心より御祈りします。2014/11/09
やせあずき
8
世界的免疫学者の著者が若い頃アメリカへ留学した頃の話、奥さんとの思い出などを綴られたエッセイ。その後半で、脳梗塞で半身不随になられてからの壮絶な人生が描かれています。三日三晩死線を彷徨い、生きて帰れば、体は麻痺して言葉も出ない、死にたいという絶望から、生きる希望を持って「これだけ生きたら、明日死んでもいい」と思えるまで精一杯生きられたところは、生かされていることの意味、生きていくことの大変さを考えさせられました。2014/07/07
OMO
1
面白さ:△ 興味:○ 読みやすさ:○ 新鮮さ:○ 文学的云々:×2021/11/11
くらーく
1
アメリカが絶頂期だった50年代から陰りを見せた頃のデンバーへの留学。この頃に留学した方々は、良い人生を送っている方が多い印象を受ける。良いもの、良い体験をすべき時期ってあるんだろう。それにしても、多田先生は好奇心旺盛だし、恐れを知らない。ハートでぶつかる情熱的な方なんだろうなあ。だからこそ、帰国しても忘れず連絡を取り、訪米すると様子を見に行く。人の上に立つ意識と行動だね。 晩年は、身体的には辛い状態だけど、それからの精神的な高まりを記されていて、助けられる人も多いんじゃないかなあ。素晴らしき人生のお手本。2019/06/15