内容説明
私は川上のどことも知れぬところで誰とも知れぬ親に産んでもらった――けれども人間はいずれ生れて川に流されるものではないのか。どんな人でも多かれ少なかれ水に流されながら生きて行くのではないのか――。有田川の氾濫のたびに出自を失いながら、流れ着いた先で新たな生を掴み取る紀州女、千代の数奇な生涯。『紀ノ川』『日高川』に並ぶ、有吉文学における紀州三部作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
naginoha
56
有吉佐和子往年の名作「川もの」の一つ。私の地元で先日これ原作の演劇が行われ、少し関わった縁もあり再読。 明治の水害で二度も流された千代がその数奇な運命に揉まれながらも激動の時代を強く生きる物語。 活き活きとした会話、振舞は正に「わえがちさいときのおばん、おいやんらとしょうやごう」 登場人物は架空だけど(モデルはいる模様。金鳥の初代社長とか)地名やみかん栽培の変遷などカルチャー面はリアルそのもの。地元民はそこでかなり楽しめます。 そうじゃない人も千代のたくましい女性像に惹かれること請け合いです。4/52020/11/09
カーミン
32
和歌山県の有田川に沿って住む人々を描いた長編小説。時に滔々と流れ、時に荒れ狂う有田川に人は添い、そして翻弄されていく。素封家の娘だった千代は、妹が生まれた時に口さがない親類たちの言葉で、自分が実の子でないことを知る。ある日、有田川の氾濫で千代を含め多くの人々が、川下に流される。千代は生きて救いだされるが、今まで育ててくれた両親のもとには帰らず、そこでみかん農家の女子衆として働き始める。川の氾濫、戦争、結婚、出産。さまざまなことを経験しながらも、千代の人生はみかんと有田川と共にある。2026/02/14
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
30
有田の蜜柑作りの女性の一生。有吉氏らしい綿密な小説。度々氾濫する有田川の恐ろしさ、女性の出生の不思議さ、蜜柑作りの楽しさ苦しさがよくわかる、一気読みの作品。2019/12/02
いくら
30
有田みかんで有名な紀州の有田川流域を舞台にしたひとりの女性の生涯。川上の名家の長女として育った千代は、美しい妹が生まれたときに自分が両親の実子でないことを知ってしまう。そして12歳のとき有田川の氾濫で濁流に呑まれ、流れ着いた先の蜜柑農家で女衆として生きていくことになった。やがて幸せな結婚をして蜜柑づくりに精を出し、その知識の豊富さから「蜜柑の小母ん」と呼ばれるまでになる。出自の悩み、度重なる水害、新しい技術にも折れずにしなやかに生きる彼女の生き方は、清々しい。2014/08/12
ソーダポップ
25
「有田川」のヒロインは美貌の女性ではないけど、物語のドラマティック度は他の追随を許さない。題名の通り物語の中心はいつも有田川があるのだが、有田川の流れる和歌山県の有田地方は温州蜜柑の生産地で「蜜柑」を中心に回っている。蜜柑栽培の名人から、口伝えで蜜柑の育て方を覚えていく所から始まって、現代的な農法がメインになってゆき最後には蜜柑の缶詰工場が登場する。蜜柑の変遷とヒロイン千代の成長と加齢による衰退が上手くリンクしているのは、流石の面白さだ。「紀ノ川」同様に感動する読み物としては、レベルの高い作品でした。2024/05/28
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