内容説明
交錯する民族と宗教、今決戦が始まる。
マハバード奪還をめざすクルド人への武器の供給が、いよいよ間近に迫る。だが、武器密輸商人ハジの前にあらゆる障害が立ちはだかり、思うようにクルド人の元へたどりつけずにいる。
一方、そのクルドの民を押さえ込まなくてはならないイランの革命防衛隊が、内部の腐敗により、その機能が低下しはじめる。機能を失いつつある革命防衛隊を立ち直らせたいと、崇高な理想を掲げるサミルが、まさかの裏切りにあい、窮地に追い込まれる。
いざ決戦の時。クルド人のもとに、ようやく20000丁のカラシニコフが届く。彼らはマハバード奪還を成し遂げられるのか。イラン革命防衛隊は、それに応戦できるのか。マハバードの地でクルド人のカラシニコフが一斉に火を噴く。
絡み合った糸が、ほどけていくように、奇跡の再会を果たすサミル・セイフと姉のシーリン・セイフ、そして隻脚の日本人ハジと武器密輸商人ハジの一瞬の邂逅、そして、かつて愛し合ったシーリンと隻脚の日本人ハジとの不思議な縁・・・。
全ての伏線が一つになり、驚きの結末に。読む者は必ず、その壮大なストーリーに打ちのめされる。船戸与一最高傑作とも呼べる超大作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
k5
55
そんなつもりで読みはじめ他のじゃなかったのに、気がつけばタイムリーになってしまっていました。テヘランのアメリカ大使館占拠から、イラン・イラク戦争を舞台に、湾岸戦争の寸前までを描いたイランの物語。物語としては古いしつらえなので、一回でいいかなあ、と思ってましたが、これはもう一回読むべきかな。2026/03/04
kaoru
39
骨太な物語。イランの民族紛争がテーマ。テレビの中でしか知らない世界にも、英雄や悪人ではない普通の人間が生きていきていて、考え、苦しみ、もがいています。私とは縁遠いと思った世界が不思議と身近に感じられました。2017/05/11
k5
38
冒険小説が流行らなくなって久しいのですが、この作品を読むとそれはとても残念なことに思えてきます。革命防衛隊、クルド人、アゼル人を交えてイランの運命を描く器の大きさは、冒険小説にしかできないもので、厨二病の自分が憧れたのもこの視野の広さと、世界を舞台にする懐の広さだったのだと思います。シミタツとかだとおっさんのマッチョイズムがキモかったりもしますが、船戸与一を道標に冒険小説の復興を!2026/04/02
姉勤
34
革命、理想、独立、民族、殉教、主義、そして、復讐。個を超えた大義に心を任せた時、人は恍惚の中に生き、死ぬ。たとえ激烈な痛みが伴おうとも。イラン革命に端を発し、湾岸戦争前夜を以ってひとまず筆を置くこの戦史は、数多の名もなき人々の哀しみによって紡がれて、そして人間が地球にある限りとともに続く。モスクのモザイクの一ピースのごとく、縁が戦いを生み、因と成り、果となる。ハジと呼ばれる二人の日本人が関わったイランにおけるこの闘争は、有史以前から何万何億と繰り返された、ひとの営み。偉大な唯一神が振った賽子の目。2016/04/19
ひよこ
34
重量感がハンパない作品!舞台は1990年前後のイランが中心で、当時の世界情勢をとても詳細に書かれていることもすごいが、なんと言っても登場人物が魅力的!誰一人明るい人生を歩いているわけではないけど、こいつを主人公にして小説が一つできるんじゃないのっていうキャラクターが少なくとも3人いる!そんな登場人物たちが一つの小説に詰め込まれていることが、この作品のすごいところだと思う。読むのに時間と集中力が必要だったけど、読了後にはハッピーエンドで終わる小説では絶対に味わえない虚脱感と満足感があります。2015/12/21
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