内容説明
隣国・出散渡の統治者ラウフ・カダルが楽土に乗り込んだ。以前はムメイと名乗り、シン音導師の音討議を見ていた男が、己の意思を代弁する音導師――ザイオンを連れて。そして――かつての盟友を相手に楽土の存在意義を懸けた、シン音導師最後の音討議が始まった。シリーズ最終巻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひめありす@灯れ松明の火
46
冬の物語は、死者の物語。語られることのない死の影を纏わり憑かせたイーオンと楽土の、最後の物語。諦めた明るさと穏やかさが、もう一度前を向いた。そして雷の少年のはじまりの物語。春の雷は冬将軍の出発を告げ、夏の雷は一時の涼を運んでくれる。稲妻は実り告げる秋の言葉。冬の雷は大雪の前兆。何時でも、何処に居ても空を見上げてその音を聞いたなら、きっとあなたの姿を思い出す。やせっぽちの大酒のみで、口が悪くて面倒くさがりの、たった一人の師匠の姿を。異音。音だけでなく掌で、仕草で、後ろ姿で、沢山の事を教えてくれた、その事を。2014/06/12
ゆきちん
45
④冬、最終巻。隣国、軍事政権が攻め滅ぼそうとする神の国楽土。隣国は攻め入る前に『音討議』を申し入れてくる。病で命が危ない伝説の音導師イーオンはそれこそ命がけで楽土を守る為にかつての兄弟子に挑む。が、イーオン自身の過去が…すごくもりあがって、全部まとまって、とても面白いシリーズでした。軽いのに深い。世界観が出来上がっている。どっぷり楽しめます。漢字で楽しむファンタジーです。2017/09/07
ミルルン
31
出会いの春、成長の夏、実りの秋と綴られてきた物語の、最終巻は別れの冬でした。別れの冬ということで、ものすごく辛い別れを想像していたので、きれいにまとまり過ぎかなとも思うけれど、ああよかったなという気持ちも大きいです。楽土の存在そのものを問うシン音導師最後の音討議、思わず聞き入っていました。「言葉で闘う」楽土の物語、最初はおとなしめかなと思っていたけど、いつの間にかこの世界を楽しんでいて、終わってしまうのを寂しく思います。季節がひと回りして再び巡ってきた春。新しい世界へ旅立っていく少年がとても眩しいです。2015/05/22
まりもん
24
ヤコウとの音討議はイーオンにとっては生きていてくれて嬉しい部分もあるけれど、やっぱりシン達の楽土を守って欲しいという気持ちにも応えなきゃいけなくて過去と向き合ったりと読み応えがあった。ラストのシンが旅立つ時のやりとりが彼女らしかったなぁ。2014/05/04
深青
20
遂に最終巻。あぁぁ、終わってしまう…どうなるんだろう?って、切なくもワクワクしながら読みました。吹き荒れる吹雪を乗り越えて、新しい時代、春の訪れを感じさせる流れとなっていました。良かった…!きっと芽吹いた新芽は、困難にぶち当たりつつも大きく育っていくのでしょう。イーオンにお疲れ様でしたと言いたいですが、まだまだ元気に弟子をからかってほしくもあります(笑)2015/02/16